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日本画

2020年2月 5日 (水)

上村松園と美人画の世界・・・肉体の美と叡智の美

Uemurashoen2020
2009
大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』第208回
新春の夕暮れ、山種美術館に行く。美しいものが美しいのは何故か。美人画の根拠について考える。上村松園「序の舞」(1936)は、近代美人画の頂点といわれる『東西美人画の名作≪序の舞』への系譜』2018藝大美術館。上村松園の美人画は、喜多川歌麿の系譜であると言われる。喜多川歌麿を超える美人画はないのか。上村松園には、円山応挙の影響を受けた作品がある。円山応挙『江口君図』1794、円山応挙『楚蓮香図』1794、上村松園『楚蓮香之図』1924。
1、美とは何か。
生成界の美、叡智界の美。無色界、色界、欲界、天人の美。
「美とは何か」という問いは、プラトン『ヒッピアスMajor』を想起する。ソクラテスはソフィストを問い詰め、ヒッピアスは「何が美しいか」を語る、例えば<美しい乙女><黄金><美しい神々>。ソクラテスは「何が美しいか」ではなく「美とは何か」を問うているのだという。<視覚と聴覚を通じての快楽>を吟味し論駁する。結局アポリアに陥り、無知を宣告して、対話は終了する。ソクラテス<視覚と聴覚を通じての快楽>が美しいのは、このゆえに、つまりそれが視覚を通じるがゆえにではないだろうからね。なぜといって、もしこのことがそれが美しくあることの原因だとしたら、もう一方の、聴覚を通じての快楽のほうは、けっして美しくはないだろうからだ。」(299E) 『ヒッピアスMajor』
魂の美を描く美人画が存在する。村上華岳『裸婦図』(1920)。菱田春草『水鏡』(1897)『王昭君』(1902)。横山大観『流燈』(1909)。
2、村上華岳『裸婦図』(1920)
村上華岳『裸婦図』、華岳は久遠の美を目ざした。アジャンタ石窟、『モナリザ』の影響があると、美術史家は説明する。村上華岳(明治21年1888—昭和14年1939)。山水と仏画を主題とした作品を多く描き、東西の様式を吸収し、宗教的境地から生れる芸術性の高い、神秘的な日本画を探求した。51歳で死す。村上華岳の師の一人は、竹内栖鳳(1864-1942)である。

3、菱田春草、東京美術学校事件、急進派として懲戒免職。美人画『王昭君』、幻の『雨中美人』
明治31年1898、東京美術学校事件で、急進派として懲戒免職。菱田春草『王昭君』は、悲劇の美女の姿、美しい魂を描く。菱田春草『水鏡』(1897)天人の衰えを水鏡に表現する。菱田春草『黒き猫』(1910)は、『雨中美人』(1910)、六曲一双を描いていたが完成せず、代わりに黒き猫を出品した。翌年、37歳で死す。菱田春草(1874-1911)
4、村上華岳の師、竹内栖鳳(1864-1942)
竹内栖鳳『飛天舞楽図』草稿1911(東本願寺蔵)。栖鳳は、天女を描くことに腐心した。「竹内栖鳳『散華』1914年(大正3)絹本着色 6曲1隻(京都市美術館蔵)。東本願寺から大師堂門の天井絵の依頼を受けた栖鳳は、その題材に飛翔する天女を選びます。この構想は実現しなかったのですが、《散華》は、その折に試作として制作されたものです。(山崎妙子)山種美術館」
*大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
大久保正雄『永遠を旅する哲学者 イデアへの旅』
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★参考文献
図録『日本美術院創立100周年記念 日本美術の軌跡』東京国立博物館1998
村上華岳「裸婦図」・・・魂の見えざる美
https://bit.ly/2UjDGoL
上村松園展・・・美人画の系譜
https://bit.ly/2OoIu8B
村上華岳「裸婦図」・・・崇高なヌード
https://bit.ly/2OlGQo8
上村松園、美人画の粋・・・夏の緑陰の午後
https://bit.ly/2UjE8Dt
竹内栖鳳展 近代日本画の巨人・・・哀愁のイタリア、『ベニスの月』
https://bit.ly/394zM7A
東西美人画の名作《序の舞》への系譜・・・夢みる若い女、樹下美人
https://bit.ly/394A5zg
黒き猫は、37歳で病で亡くなった菱田春草の孤高な姿を思い浮かべる。
細川家の至宝、珠玉の永青文庫コレクション・・・織田信長「天下布武」と菱田春草「黒き猫」
https://bit.ly/2Pjv8Kx
「円山応挙から近代京都画壇へ」藝大美術館・・・円山応挙「松に孔雀図」大乗寺
https://bit.ly/2KEGwyj
「大浮世絵展」・・・反骨の絵師、歌麿。不朽の名作『名所江戸百景』、奇想の絵師
https://bit.ly/34AB3Bz
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上村松園と美人画の世界、山種美術館、1月3日(金)~3月1日(日)

2019年6月27日 (木)

速水御舟『炎舞』『粧蛾舞戯』『名樹散椿』、山種美術館・・・舞う生命と炎と闇

Hayami2019
Hayami1926
大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』185回
初夏の夕暮れ、美術館に行く。藝術家は、運命と戦い、苦難を超え、真実在を追求する。速水御舟は、生涯、新しい絵画を探求し努力しつづけた。松本楓湖の弟子の時代、細密画の時代、琳派の時代、人物画の時代。速水御舟が追求した梯子の頂上とは何か。細密画の極致、琳派の画法か。速水御舟が追求した、真実在とは何か。
「梯子の頂上に登る勇気は貴い、更にそこから降りて来て、再び登り返す勇気を持つ者は更に貴い」『速水御舟語録』1935。「実在するものは、美でも醜でもない。唯真実のみだ。」速水御舟『私の行く道』1932
「人間の真の姿がたち現れるのは、運命に敢然と立ち向かう時である」シェイクスピア
美は真であり、真は美である。これは、地上にて汝の知る一切であり、知るべきすべてである。
美しい夕暮れ。美しい魂に、幸運の女神が舞い降りる。美しい守護精霊があなたを救う。美しい魂は、輝く天の仕事をなし遂げる。
*大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』
大久保 正雄『永遠を旅する哲学者 イデアへの旅』
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【速水御舟40歳で死す】速水御舟は、31歳で『炎舞』(1925)、35歳で『名樹散椿』(1929)。40歳で死ぬ。妻は92歳まで生き、長女、速水弥生(大正11生まれ)は長寿である。
速水御舟(1894-1935)は、『炎舞』の炎に舞う蛾のように40年の短い生涯を終えた。短い人生のうちに、不滅の傑作、『炎舞』(1925)31歳、『粧蛾舞戯』(1926)、『翠苔緑芝』(1928)、35歳で『名樹散椿』(1929)、『京の舞妓』(1920)、『樹木』(1925)を残した。
大正8年25歳の時、浅草駒形で市電に足を轢かれ左足切断する。不運にめげず画業に精進する。不朽の傑作『炎舞』を残し、40歳で死す。死因は腸チフス。
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松本楓湖、今村紫紅と出会う
速水御舟は、松本楓湖の画塾、安雅堂に、14歳の時、入塾する。17歳で『瘤取之巻』を描く。画塾の先輩、今村紫紅と出会う。23歳で日本美術院同人に推挙される。
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速水御舟の頂点1920-1929
細密画1920-1923 26歳から29歳
『京の舞妓』(1920)『菊花図』(四曲二双屏風1921)は、緻密な細密画の極致である。岸田劉生の影響を受けて、リアリズムの絵画を描き始めた。細密画の系列には『輪島の皿に柘榴』、『寒鳩寒雀』があり、異様に緻密な世界に圧倒される。リアリズムの極致である。『京の舞妓』(1920)の醜悪をも描く、写実の背後に細密画の世界がある。『桃花』(1923)には、宋代、院体花鳥画の影響がある。
琳派の画法1925-1929 31歳から35歳
俵屋宗達の画法を研究して、琳派の画面構成を意識し、装飾的、構成的様式を打ち立てる。
不滅の傑作、『炎舞』(1925)、『粧蛾舞戯』(1926)、『葉蔭魔手』(1926)『翠苔緑芝』(1928)、『名樹散椿』(1929)を制作する。
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渡欧、1930年、36歳
御舟は、1930年、ローマ「日本美術展覧会」に美術使節として、横山大観とともに渡欧した。客船で洋行し、大観と同じ食卓を囲んだ時のメニューに御舟が書いた手紙が残っている。10か月間、イタリア、ギリシア、フランス、スペイン、イギリス、ドイツ、エジプト、各地を旅した。
渡欧の目的の一つは、エル・グレコを見るためで、トレドに行った。「
『アクロポリスのコレー』(1930)『アルノ河畔の月夜』(1931)に旅の思い出が留められている。この時、ジョット、エル・グレコに感動し、人物画の造形に影響を受けたといわれる。
素描、『女二題』の女性をえがく線に表れている。
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晩年、無色透明、40歳
晩年の作品は、花の絵が多い。死の匂いが漂う。『春の宵』『桔梗』『牡丹花』1934
「技法の究極は無色透明だと思う。画道の学徒は種々の技法を習得し、而して次第に脱落させ――無色透明にかえったとき、技法の真諦に逢着する」『塔影』9巻8号、1933
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美しい線
今日、美しい線、緻密なデッサンを描ける画家は少ないといわれるが、御舟の「牡丹写生図巻」「昆虫写生図巻」(1925)には、まれにみる美しい線、細密画のデッサンの存在を見ることができる。美しい花の花弁、妖しい蛾の美しさが、一すじの線によって描かれている。
絶筆『円かなる月』には、死の匂いが漂っている。
1910年(明治43年)作「小春」から、1935年(昭和10年)最後の作品となった「盆梅図(未完)」、平塚市美術館にて約120点、展示された。
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主な展示作品
《瘤取之巻》、 《錦木》、 《山科秋》、 《桃花》、 《柿》、 《春昼》、 《百舌巣》、 《炎舞》【重要文化財】、 《昆虫二題》、 《供身像》、 《翠苔緑芝》、 《名樹散椿》【重要文化財】(6/8-7/7展示)、 《紅梅・白梅》、 《オリンピアス神殿遺址》、 《埃及(エジプト)土人ノ灌漑》、 《青丘婦女抄 蝎蜅(カルボ)》、 《豆花》、 《写生帖》、 《春池温》、 《椿ノ花》、 《あけぼの・春の宵》、 《桔梗》、 《牡丹花(墨牡丹)》、 《秋茄子》 
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参考文献
『速水御舟 作品集』2019
【開館50周年記念特別展】『速水御舟の全貌―日本画の破壊と創造』2016
速水御舟 ―日本美術院の精鋭たち・・・燃え上がる生命の炎舞
https://bit.ly/2yEOkKf
速水御舟展、平塚市美術館・・・細密画の極致、炎に舞う儚い生命のように
https://bit.ly/2IbuZVt
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生誕125年記念、速水御舟、山種美術館、6月 8日(土) ~ 8月 4日(日