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国家戦略

2019年1月11日 (金)

孫崎享『幕末史の謎、理念なき国家』孫崎享×大久保正雄『国家権力の謎』第12回

Magosaki2018_022015孫崎享×大久保正雄『国家権力の謎』第12回
秋の午後、孫崎氏の家で歓談した。孫崎享先生の新著『アーネスト・サトウと倒幕の時代』の構想について、質疑応答した。主な論点は次の点である。
1「理念なき国家、明治の嘘」尊王攘夷は権力を横領するための嘘。権力の不正な略奪。「孝明天皇は毒殺された」。2「徴兵令(1873年)は、憲法(1889年公布)と議会制度の前に成立した。理念なき国家。3「侍は権力者に仕えるシステム」奴隷のように支配者に仕えるシステムは、江戸時代に構築されていた。
1、幕末、明治の真相について
――
孫崎享『アーネスト・サトウと倒幕の時代』2018/12/5刊行予定。
日本が焦土になることを危惧して、統幕から和平交渉へ転換した英国外交官。勝・西郷会談を英国外交官アーネスト・サトウは演出した。
「噂によれば、天皇陛下は天然痘にかかって死んだという事だが、数年後、その間の消息によく通じているある日本人が私 (アーネスト・サトウ)に確言したところによれば、天皇陛下は毒殺されたのだという。この天皇陛下は、外国人に対していかなる譲歩を行う事にも、断固として反対してきた。」『一外交官の見た明治維新』
【坂本龍馬暗殺】
坂本龍馬を誰が殺したのか、薩長側であったか否かは、明治政府の性格の理解に非常に重要。龍馬は天皇の下に慶喜を含むオールジャパン的なものを志向。この龍馬暗殺となれば薩長側は単に政権獲得だけを目的の性格となる。だから幕府側が殺害というバージョンを必要とした。新選組という構図が出る。(孫崎享2018年11月12日)
大政奉還の後、龍馬は天皇の下、徳川慶喜をも含めたオールジャパン構想の提唱に向かう。それを取り上げたのが山内容堂。だが山内容堂は会議で慶喜を入れることを主張するが、西郷隆盛の脅し(間接的)でこの主張を止める。こうした流れの中で龍馬は殺されている。
「理念なき国家、明治の嘘」うそつき、詐欺師集団
うそつき集団、詐欺師集団が権力を横領した。「尊王攘夷」という人々、攘夷と言いながら、英国と共謀した討幕派。薩摩、長州は英国と共謀した。
「孝明天皇は毒殺された」
「天皇の死因については、表面上疱瘡で病死ということになっているが、毒殺の疑いもあり、長い間維新史上の謎とされてきた。犯人は岩倉具視である。」佐々木克『戊辰戦争』中公新書P8-9。犯人は岩倉具視、大久保利通。幼少の明治天皇を操った。
「近年、当時孝明天皇の主治医であった伊良子光順の残した日記が一部公にされ、光順の子孫である医師伊良子光孝氏によって、孝明天皇の死は、光順日記で見る限り明らかに「急性毒物中毒の症状である」と断定された。やはり毒殺であった。
犯人について伊良子氏はなにも言及していない。しかし、当時の政治情況を考えれば、自然と犯人の姿は浮かびあがってくる。洛北に幽居中ながら、王政復古の実現を熱望して策をめぐらしている岩倉にとって、もっとも邪魔に思える眼の前にふさがっている厚い壁は、――親幕派の頂点孝明天皇その人であったはずである。―岩倉自身は朝廷に近づけなかったが――大久保は――公卿の間にもくい込み、朝廷につながるルートを持っていた。――直接手をくださずとも、孝明天皇暗殺の黒幕が誰であったか、もはや明らかであろう。」
この本は7月末脱稿。当初社長さん歴史ブームだから早く出しましょう、二、三週間で刊行と言われてましたが、伊藤博文自身の暗殺行為、孝明天皇暗殺、龍馬暗殺、江戸城引き渡しへの英国関与等論議呼ぶテーマを含み著者が著者だけに右翼が狙ってくると、一時は4人がかりで原稿チェック。(孫崎 享‏ @magosaki_ukeru 11月13日)
――
2、【理念なき国家、明治】
孫崎享
明治政府は、薩長による権力の奪取であり、市民による統治の実現ではない。「徴兵令(1873年)は、憲法(1889年公布)も議会制度の前に成立した。
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大久保正雄
フランス革命では、バスティーユ牢獄襲撃1789年7月14日の1か月後に、『人権宣言』が出される。『人権宣言』1789年8月26日。『人間と市民の権利宣言』、自由、平等、圧制への抵抗権を自然権とする。その維持を統治の目的とする。国民主権、法の支配、権力分立、私有財産の不可侵、が規定された。
『1791年憲法』9月3日、「徴兵制の実施」1791年2月、3月10日、実施。
――
3、【奴隷階級】
孫崎享氏は、奴隷のように支配者に仕えるシステムは、江戸時代に構築されていた。と考える。*ハーバート・ノーマン『忘れられた思想家 -安藤昌益のこと』
侍とは、権力に仕える者の意味である。
【奴隷階級】「あらゆる人間は、いかなる時代におけるのと同じく、現在でも奴隷と自由人に分かれる。自分の一日の三分の二を自己のために持っていない者は奴隷である。」 ニーチェ『人間的な、あまりに人間的な』
――
4、【平安時代は暴力装置なき国家】
清盛は、後白河に泣きつかれたために「朝廷の暴力装置』としての当然の役目を果たした。『歴史に裏切られた武士 平清盛 - 第 1 巻』
暴力装置の政治権力の中での正当性を確立する道を、みずから閉ざさせものとするという、重要な課題 ・・・ 保元,平治の兵火によって生れるまで、平安時代には見られなかった、第二は、政治目的を達するのに赤裸々に暴力に依拠することがない。『明月記研究 6号(2001年11月): 記録と文学』
【西面の武士】鎌倉時代、上皇に仕え、身辺の警衛、奉仕などにあたった武家集団。1200年ごろ、後鳥羽上皇が鎌倉幕府の軍事力に対抗して結成したとされる。倒幕準備のために創設したとする説の他、武芸を好んだ 貴族。
――
★参考文献
★アーネスト・サトウ『一外交官の見た明治維新』(上下)(坂田精一訳、岩波文庫、1960年)
★ノーマン「徴兵令(1873年)は、憲法(1889年公布)も議員制度の前に成立。ハーバート・ノーマン『日本の兵士と農民』(岩波書店、一九五八年)
ハーバート・ノーマン『忘れられた思想家 -安藤昌益のこと』(岩波新書全2巻1950年)
★ジョセフ・ニューマン 陸海軍は国民に対しては責任を負わない。天皇にのみ忠誠。軍は自分たち以外誰に対しても責任を負わない。
ジョセフ・ニューマン『グッドバイ・ジャパン』
☆指導者層の「サムライ化」。新倫理の中心部分は、忠誠の観念を一層強調し、儒教的用語で再構築、愛国心や法の遵守。S.N.アイゼンシュタット『日本比較文明論的考察』岩波書店2004
★佐々木克『戊辰戦争』中公新書P8-9。
半藤一利『幕末史』平凡社
――
孤高の思想家と藝術家の苦悩、孫崎享×大久保正雄『藝術対談、美と復讐』
https://bit.ly/2AxsN84
検察は権力の奴隷、マスコミは追及せず。独裁政権、止めるシステムなし。孫崎享
孫崎享×大久保正雄『国家権力の謎』第10回
https://t.co/UV5VZGgQ5G
日本国家、ファシズム14の兆候
孫崎享×大久保正雄『国家権力の謎』第11回
http://bit.ly/2vO4qzC
独裁政権、民主主義は崩壊。ファシズムの14の兆候。うそ、公文書改竄、隠蔽、最高権力者。権力に隷従、盲従する官僚の群れ
孫崎享×大久保正雄『国際政治の舞台裏 核の傘は存在するのか』ソフィア文化芸術ネットワーク
https://bit.ly/2uGOZcm
2018年11月8日

2018年3月 4日 (日)

高貴な精神とは何か。失われた巨匠たち。悪質な詐欺師が跳梁する偽物の時代。

Romeo_and_juliet_01大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』第139回
高貴な精神とは何か。失われた巨匠たち。悪質な詐欺師が跳梁する偽物の時代。本物志向の時代の終焉。偽物を尊ぶ末人、畜群の時代。目先の利益と地位を追求する末人。理念と正義が崩壊した時代。千年、具眼の士をまつ。「われわれは幸福を発明した。末人たちはそう言ってまばたきする」『ツァラトスゥトラ』序
1、学問の劣化。現代では、偽物が跳梁跋扈する。末人、畜群の時代。
現代の学者のレベルは低い。三浦るり、井上達夫、藤原帰一、御用学者、末人の群れ。真理に仕えず、金と地位に仕える畜群の先導者。末人は人を見るときその外面、地位肩書きで判断する。1960年代から1990年代の学問の水準は高かった。
高貴な精神とは何か。
「人が本当に見ることができるのは心によってだけである。本質は、目で見えない。」具眼の士は肩書き地位で判断せず、人をその中身で見る眼力をもつ。「千載具眼の徒を竢つ」伊藤若冲。孫崎享氏は、心眼で本質を見る。人を中身で見る眼力をもち、逆境の中にあって真実と美徳を追求する精神である。人間の中身とは、魂、人格、才能、識見、天に捧げる仕事である。建築家、梵寿綱師は「藝術、建築は、天に仕える仕事である」という。
この世の片隅で、世に埋もれながら、天の仕事をなす藝術家がいる。高島野十郎、不染鉄。若冲、蕭白。高貴な精神の持ち主である。一流の人間だけが一流の才能を評価する。
孤高の画家、蝋燭の画家、高島野十郎
高島野十郎は、水産学の研究を辞し、終生家族を持たず、師もなく、画壇とも関わらず、画壇や世に背を向け、売れもしない精密な写実画を黙々と描き続けた。世話になった人たちに30枚ほど蝋燭の絵を礼として渡した。『傷を負った自画像』(1916)
幻の画家、不染鉄
大正7年、京都市立絵画専門学校へ入学。同期の上村松篁と親交を深める。不世出の才能。才能を高く評価されながら、戦後、画壇を離れ、晩年まで世の片隅、奈良で画業を続ける。*『山海図絵(伊豆の追奥)』大正14年、『南海之図』昭和30年頃 愛知県美術館、『廃船』昭和44年頃 京都国立近代美術館。
失われた幻の時代、人文科学の学問の巨匠が存在した。手塚富雄、清水純一、井筒俊彦、辻直四郎、長尾雅人、宮坂宥勝、久保田淳。
永遠の書架に立ちて、千年、具眼の士をまつ
わたしが14歳の頃、読んでいたのは、プラトン、李白、中島敦。古典の世界に憧れた。17歳の時、詩の本を集め始めた。17歳の時、『エウリピデス』(Oxford Classical Text)を購入した。高校生の時、シャイクスピア全集、プラトン『饗宴』を愛読した。『世界古典文学全集』『世界の名著』を愛読しつづけて時の立つのを忘れた。永遠の書架に立ちて、千年、具眼の士を待つ。
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参考文献
清水純一『ルネサンスの偉大と頽廃 ブルーノの生涯と思想』1972、清水純一『ジョルダーノ・ブルーノの研究』1970
井筒俊彦『意識と本質』1983、井筒俊彦『イスラーム哲学の原像』1980
手塚富雄『世界の名著 ニーチェ』1966『ツァラトゥストラ』、西尾幹二『ニーチェ』第1部、第2部1977、西尾幹二『ニーチェとの対話』1978、手塚富雄『手塚富雄全訳詩集』1971、辻直四郎『インド文明の曙―ヴェーダとウパニシャッド』1967、宮坂宥勝『沙門空海』1967、長尾雅人、服部正明『世界の名著第1巻『バラモン教典/原始仏典』1969、塚本邦雄『戀 六百番歌合―《戀》の詞花對位法』1975、塚本邦雄『花隠論』1973『定家百首 良夜爛漫』1973
ディミトリー・セルギェーヴィチ・メレシコフスキー『ユリアヌス 神々の死』(1894年) 米川正夫訳 1986、『レオナルド・ダ・ヴィンチ 神々の復活』(1896年)米川正夫訳1935年岩波文庫1987河出書房、『ピョートル大帝 反キリスト』(1902)
アンドレ・シャステル桂芳樹 訳『ルネサンス精神の深層-フィチーノと芸術-』1989
清水純一『ルネサンス 人と思想』1994、ケネス・クラーク『レオナルド・ダ・ヴィンチ』1981、高階秀爾『ルネサンスの光と闇』1971、辻惟雄『奇想の系譜 又兵衛--国芳』1971『奇想の図譜 からくり・若冲・かざり』1989、佐藤康宏「プライス本鳥獣花木図の作者――辻惟雄氏への反論」『國華』1432号、2015
宮坂宥勝、梅原猛『生命の海<空海>』角川書店1968、松長有慶『理趣経 秘密の庫を開く 密教教典』集英社1984、松長有慶『空海-無限を生きる』集英社1985、宮崎忍勝『私度僧 空海』1991
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2、虚偽の権力が栄える国、理念を追求する人は弾圧される。
権力が栄える国、思想家が弾圧される。思想家、北一輝、二・二六事件で処刑された、昭和11年1936年。大逆事件の幸徳秋水処刑1910年、甘粕事件の大杉栄1923年9月16日、治安維持法1925年、二・二六事件で、思想家、北一輝処刑。昭和11年1936年、小林多喜二の獄中死1933年。近衛文麿失脚1941年。
http://bit.ly/2qVd6oU
孫崎享×大久保正雄『国家権力の謎』第11回
http://bit.ly/2vO4qzC
検察は権力の奴隷、マスコミは追及せず。独裁政権、止めるシステムなし。孫崎享
孫崎享×大久保正雄『国家権力の謎』第10回
https://t.co/UV5VZGgQ5G
偽物志向の国、日本の商品の質が著しく低下
日本の製造業「壊れつつある」−米紙が分析、日刊工業新聞
https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00460670
――
3、逆境の時代においても理想を追求して努力する人。運命は勇者に微笑む。
現代、医学の稀少な分野で、命を救うために、高度な真理の探究が行われている。光免疫治療法の小林久隆研究医(NCI)、がん抑制遺伝子治療法の上久保靖彦研究医(京都大学大学院医学研究科教授)。
――
世界を変える奇跡のガン最新治療法「光免疫治療」
http://omoronews.whdnews.com/p/1802/08KA6Xsl1.html
羽生結弦「容姿は宝石の如く、姿は松の如し。軽さは大白鳥の如く、美しさは舞う龍の如し」「運命は勇者に囁きました、あなたは嵐に対抗できません。勇者は言い返しました、私が嵐ですと」中国CCTV
2018年3月4日

2018年3月 1日 (木)

失われた巨匠たち。悪質な詐欺師が跳梁する偽物の時代。映像の魔術師の死。

Romeo_and_juliet_5大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』第138回
失われた巨匠たち。悪質な詐欺師が跳梁する偽物の時代。本物志向の時代の終焉。偽物を尊ぶ末人、畜群の時代。目先の利益と地位を追求する末人たち。理念と正義が崩壊した時代。「われわれは幸福を発明した。末人たちはそう言ってまばたきする」『ツァラトスゥトラ』序
1、映画の巨匠、映像の魔術師たちたちの時代の終焉。劣化する文化。
大学事務局上層部と会合で意見交換した。「映画業界で人材育成が失敗した。監督、脚本家、撮影監督、映画制作者の質が低質化、劣化している。これと同じく大学教員、研究者の質が致命的に劣化した」
『シンゴジラ』などの駄作が持て囃される時代。現代で時代を超えて残る映画監督は、ギレルモ・デルトロ『パンズ・ラビリンス』2006『シェイプ・オブ・ウォーター』であるか。
イタリア映画の巨匠たちの時代は終焉した。ヴィスコンティ『ルドヴィヒ 神々の黄昏』『山猫』、フェリーニ『サテリコン』『フェリーニのアマルコルド』『魂のジュリエッタ』、パゾリーニ『王女メディア』。アメリカ映画の巨匠たちの時代も終焉した。
――
映像の巨匠たち 1960-2000年
フェデリコ・フェリーニ(Federico Fellini, 1920—1993)イタリア・リミニ生まれの映画監督、脚本家。「映像の魔術師」。
フェリーニ『フェリーニのアマルコルド』1973『魂のジュリエッタ』1964『サテリコン』1969『カサノバ』1976『オーケストラ・リハーサル』1979『そして船は行く』1983『道』1954『カビリアの夜』1957
ピエロ・パオロ・パゾリーニ(Piero Paolo Pasolini, 1922-1975)。イタリアの映画監督、脚本家、小説家、詩人、劇作家、評論家、思想家。パゾリーニ『王女メディア』1969『アポロンの地獄』1967『デカメロン』1971『カンタベリー物語』1972『アラビアンナイト』1974『奇跡の丘』1964
イングマール・ベルイマン(Ingmar Bergman, 1918-2007)。スウェーデンを代表する世界的な映画監督。
イングマール・ベルイマン『叫びとささやき』1972『第七の封印』1957『野いちご』1957『処女の泉』1960『鏡の中にある如く』1961『秋のソナタ』1978。映画藝術の神髄。「神の沈黙」「愛と憎悪」「生と死」のなかに人間の精神の闇を見つめた。
ルキノ・ヴィスコンティ(Luchino Visconti, conte di Modorone, 1906-1976)。イタリアの貴族ヴィスコンティ家の傍流で、父は北イタリア有数の貴族モドローネ公爵、ヴィスコンティは14世紀に建てられた城で、幼少期から芸術に親しんで育った。
『ルードヴィヒ 神々の黄昏』1972『山猫』1963『神々の黄昏』1969『ベニスに死す』1971
フランコ・ゼフィレッリ(Franco Zeffirelli, 1923年2月12日— )ヴィスコンティの弟子。フィレンツェ出身の映画監督・脚本家・オペラ演出家。
『ロミオとジュリエット』1968『ブラザー・サン シスター。ムーン』1972
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アメリカ映画 アルフレッド・ヒッチコック『めまい』1958、ジャック・クレイトン『華麗なるギャツビー』1974、フランシス・フォード・コッポラ『ゴッド・ファーザー』1972『コットンクラブ』1984『ゴッド・ファーザーPARTⅢ』1990、リドリー・スコット『ブレードランナー』1982、スティーヴン・スピルバーグ『レイダース 失われたアーク』1981『インディ・ジョーンズ 最後の聖戦』1989
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★参考文献
『ヴィスコンティ集成 退廃の美しさに彩られた孤独の肖像』1981
篠山起信『ヴィスコンティの遺香―華麗なる全生涯を完全追跡』1982
岩本憲児編『フェリーニを読む 世界は豊饒な少年の記憶に充ちている <ブック・シネマテーク11>』フィルムアート社1994
川本英明『フェデリコ・フェリーニ 夢と幻想の旅人』鳥影社2005
三木 宮彦(著)『ベルイマンを読む―人間の精神の冬を視つめる人 <ブック・シネマテーク8>』1986
2018年2月3日
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2、美術書の終焉。カタログ時代。技術と物、軽佻浮薄を求める人々。末人は、精神の美を求めない。
秋の午後、代官山のカフェで、美術書の女性編集者と企画会議をした。
美術編集者の説明によると「美術書の出版社で、売れるのは、画集、カタログ、作品集、ガイドブック、その類。美術の表面的な皮層を解説する商品が限界。商品が売れないと出版社は生きていけない。美術書は、売れない。」美術編集者は、憂い嘆く。
「美術書は、なぜ売れないのか」
この国の読者は、美術の表面的な皮層のみを見ていて、深い真実を見ない。「エリーザベトはカネと地位のあるハプスブルグ家のフランツ・ヨーゼフに嫁入りして幸せだと大衆は思っている」「ゴッホのアルル時代の作品は色彩豊かで華やかで美しい。なぜ作品を生みだしたのか大衆は考えない」「メディチ家はカネと権力があるからルネサンスを生みだしたと大衆は思っている」と私は答える。
美術編集者は「なぜその作品が生まれるのか、を問う書はあまり存在しない」と指摘する。人気があるのは、『怖い絵』「ネコ展」「カワイイ展」などである。と美術編集者はいう。
大衆に圧倒的な人気があるのは、若冲、北斎、運慶、阿修羅像、印象派、これは群衆を瞬殺する必殺技である。
美術史家が、研究し解説するのは、技術と物と歴史的事実。書物の内容は、物カタログと案内書が主である。大衆とは別の意味で、皮層である。
ルネサンスの美の深層まで探求する美術史家は、アンドレ・シャステル、ケネス・クラーク、清水純一、僅かの学者である。
塩野七生の「ルネサンス、ローマ帝国史」は、誤謬が多いが、何を以って、真偽を判断するのか。それを指摘する人は少ない。早稲田大の古代史教授は、黙殺する。
このような現代の状況の中で、朝日まかて『眩くらら』2016は、傑出している。葛飾応為。北斎の三女、お栄。北斎の工房で絵を描いていたお栄は、二十二歳の時に、水油屋の次男で町絵師の吉之助と結婚する。家事も夜の相手もせず、只管、絵を描くお栄は、吉之助と衝突し、家を飛び出す。出戻って、工房に復帰したお栄は、才能豊かな善次郎(渓斎英泉)への密かな恋に悩む。葛飾応為は、光と影の世界を描く。*葛飾応為『月下砧打美人図』『吉原格子先之図』『‎夜桜美人図』『三曲合奏図』
――
魂の深淵、美の精神史 
美術編集者は「なぜこの書物の構想を計画したのですか」と私にたずねる。
「私は、藝術家の魂の深淵、理念を探求する精神史のドラマを、描きたい」と答えた。
思想の歴史は、戦いの歴史である。物質主義と本質主義の思想の戦いの歴史である。*大久保 正雄『ことばによる戦いの歴史としての哲学史』
2017年12月18日
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参考文献
思想の歴史は、戦いの歴史である。物質主義と本質主義の思想の戦いの歴史である。*大久保 正雄『ことばによる戦いの歴史としての哲学史』
大久保 正雄『ことばによる戦いの歴史としての哲学史 理性の微笑み』理想社
http://bit.ly/2BGiuwX
孫崎享×大久保正雄『国家権力の謎』第11回
http://bit.ly/2vO4qzC
*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
大久保正雄『永遠を旅する哲学者 美のイデアへの旅』
大久保正雄『藝術と運命との戦い、運命の女』

2016年9月 7日 (水)

『孫子』、戦略、時代を超える知恵の結晶、知への旅

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大久保正雄「旅する哲学者 美への旅」第95回
『孫子』、戦略、時代を超える知恵の結晶、知への旅

はちみつ色の夕暮れ、黄昏の丘、黄昏の森を歩き、迷宮図書館に行く。糸杉の丘、知の神殿。美しい魂は、光輝く天の仕事をなす。美しい女神が舞い下りる。美しい守護精霊が、あなたを救う。
*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
*大久保正雄『永遠を旅する哲学者 美のイデア』

『孫子』、戦略、時代と場所を超える知恵の結晶
孫子の思想の本質は、戦わずして勝つこと。敵の計略を見ぬくことである。
「兵は凶器である」司馬遷『史記』
軍の凶器をあやつって、敵を封じ、生き残ること
「兵は国の大事にして、生死の地、存亡の道、察せざるべからざるなり」『孫子』計篇
『孫子』は、群雄割拠する春秋戦国時代に書かれた戦略の書である。
『孫子』は、春秋戦国時代(BC770—BC221)の兵家の書。
『孫子』の著者は、孫武と孫武の子孫、斉に仕えた孫臏の二人とされる。司馬遷『史記』。
孫武は、執念と無念の人、呉王の軍師となる。孫臏は、臥薪嘗胆の人、数奇な人生を生きた。孫武は、春秋時代の人。孫臏は、戦国時代の人である。
紀元前515年頃、孫武本人によって原形が著される。紀元前350年頃、子孫の孫臏により、現行『孫子』に近い形に形成される。と推定されている。

上兵は謀を伐つ。「ゆえに上兵は謀をうつ、その次は交をうつ、その次は兵をうつ、その下は城を攻む、城を攻むるの法はやむを得ざるがためなり」『孫子』謀攻篇
 最も高等な戦争の方法は「敵の陰謀をうちに破ること」、その次に上等なのは「敵と同盟国との外交を破る分断」、その次は「敵軍を破ること」。そして、最も悪いことは「敵の城を攻めること」で、それはやむを得ず行うものである。
「百戦百勝は善の善なる者に非ざるなり。戦わずして人の兵を屈するは、善の善なる者なり。」『孫子』謀攻篇

★「敵の計略を見抜くことほど、指揮官にとって重要なことはない。他国を強くする者は、自国を弱くする者である。」(マキアヴェッリ『君主論』)

【ロレンツォ・デ・メディチとシクストゥス4世の抗争】
【稀代の謀略家】教皇シクストゥス4世(1471-1484)の陰謀を討ち、【フィレンツェ包囲網】1478を解くため、ロレンツォは、ナポリ王と会談。ナポリ王は、ロレンツォの心に感銘し、包囲を解く。

【敵の計略を見ぬく】
ギリシア人の智慧、最高の戦略家、テミストクレス
【ペルシア戦争】紀元前490年、第2次ペルシア戦争後、アテナイの天才的戦略家テミストクレスだけは、10年後に襲来するペルシア帝国の攻撃を見とおした。準備を始め全市民を避難させ、命を守った。
テミストクレスの提案により、婦女子をトロイゼンに疎開させ、アテナイを敵の攻撃にさらした。アクロポリスは、ペルシア軍に踏みにじられた。 (cf.プルタルコス『対比列伝』「テミストクレス伝」「ペリクレス伝」、ヘロドトス『歴史』第7巻、第8巻、トゥキュディデス『戰史』第1巻)
★Cf.「テミストクレスの決議碑文」1958年、トロイゼンのカフェニオンで発見された。トロイゼンへの疎開決議を刻した碑文。

【敵のなかに滅亡装置を潜ませる】
【トロイの木馬】トロイア戦争において、ギリシア勢の攻撃が手詰まりになってきたとき、オデュッセウスが、木馬を作って人を潜ませ、それをイーリオス市内に運び込ませることを提案した。欺かれたトロイア人たちは木馬を引いて市内に運び込んだ。
ラーオコオーンとカッサンドラーが市民たちを諫め木馬に槍を投げつけた。
(cf.トリピオドーロス『トロイア落城』)
―――――――
『孫子』十三篇
【計篇】序論。戦争を決断する以前に考慮すべき事柄について。
【作戦篇】戦争準備計画について。
【謀攻篇】実際の戦闘に拠らずして、勝利を収める方法について。
【形篇】攻撃と守備それぞれの態勢について。
【勢篇】上の態勢から生じる軍勢の勢いについて。
【虚実篇】戦争においていかに主導性を発揮するかについて。
【軍争篇】敵軍の機先を如何に制するかについて。
【九変篇】戦局の変化に臨機応変に対応するための9つの手立てについて。
【行軍篇】軍を進める上での注意事項について。
【地形篇】地形によって戦術を変更すること。
【九地篇】種類の地勢について説明し、それに応じた戦術。
【火攻篇 】火攻め戦術について。
【用間篇】「間」とは間諜。スパイ。敵情偵察の重要性について。
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メディチ家年代記 メディチ家礼拝堂の幽明境
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大久保正雄『地中海紀行』59回P20
至高の戦略家、テミストクレス ギリシア人の知恵
テミストクレスの決議文、トロイゼンで発見された大理石碑文
ヴォロマンドラのクーロス
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大久保正雄『地中海紀行』第33回P22
★アクロポリスの丘
★Lorenzo de Medici,Vasari
,Bronzino
★『孫子≪兵法≫大伝』中国歴史大河ドラマ

★参考文献
中嶋浩郎『図説 メディチ家』
アカデミア・プラトニカは「美しい精神をもつ人々の自由な集まり、プラトンに捧げられた集まり」(アンドレ・シャステル『ルネサンス精神の深層-フィチーノと芸術-』)
金谷治『新訂孫子』岩波文庫2000
酒見賢一『中国雑話 中国的思想』文春新書2007
孫崎享『日本人のための戦略的思考入門』2010
浅野裕一訳『孫子』講談社学術文庫1997
湯浅邦弘訳『ビギナーズ・クラシックス 中国の古典 孫子・三十六計』角川文庫ソフィア 2008
大久保正雄2016年9月7日