金剛界、大日如来・・・東寺講堂、円城寺、光得寺、彼方へ
http://
金剛界、大日如来・・・東寺講堂、円城寺、光得寺、彼方へ
大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』第244回
美しい海が見える森。美しい人と歩く、黄昏の丘、黄昏の神殿、黄昏の森。犬がどこかで吠えている。敵が近づいたのか。主を呼んでいるだろう。
美は真であり、真は美である。これは、地上にて汝の知る一切であり、知るべきすべてである。地中海の旅は、美への旅、知恵の旅、時空の果てへの旅、魂への旅。旅する哲学者は、至高の美へ旅する。美しい魂は、輝く天の仕事をなし遂げる。
美しい魂は、輝く天の仕事をなす。美しい女神が舞い下りる。美しい守護精霊が、あなたを救う。
【学問僧と愛犬】昼寝していると、愛犬、プードル、鼻で嗅ぎながらやって来た「帰ってきたよ」。私「戦国時代になった。敵を滅ぼしてほしい。生涯、学問を続けるために邪魔な敵がいる」と言うと愛犬「解った。滅亡させてくる」とお手をした。
【学問僧と愛犬】昼寝をしていると、愛犬、プードル、やってきた「帰ってきたよ」。お手をした。「その後、戦国時代になった。学問の邪魔者がいる。敵を滅ぼして欲しい」というと、愛犬「解った。滅ぼしてくる」と出撃した。天人の敵を滅ぼすため帰還した。愛犬、守護精霊となって帰還。天人の守護霊、如意輪観音のように。
*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
――
エジプト神話の神々。山犬姿の神、アヌビス、冥界の案内神、墓地の神。ハヤブサ姿のハトホル、天空の神。ライオン姿のプタハ、創造の女神。牝牛の姿、ハトホル女神、愛と美、豊饒の女神。頭上に聖蛇のつく日輪を戴くハヤブサ姿のラー、太陽神。雌猫姿の女神、バステト。三日月姿、コンス神。
【冥界王オシリス神】オシリスは、弟セトに殺されバラバラにされるが、妻イシスの呪力によって復活を果たす。息子ホルスがセトに勝利し、地上の王として君臨する。
冥界王オシリスと母なる女神イシスから生まれたホルスはファラオとなる。
――
【狩りの女神ダイアナと犬、フォンテーヌブロー派1550、ルーヴル美術館】
ギリシア・ローマ神話に取材した寓意画は、フォンテーヌブロー派の画家たちが好んで描いた主題である。狩の道具を手にして猟犬を連れた月と狩の女神ディアナが、森のはずれを歩いている。モデルはフランス国王アンリ2世の寵姫、ディアヌ・ド・ポワティエで、彼女は、しばしばフォンテーヌブロー派の神話画のモデルを務めている。
ディアナ、ローマ神話に登場する、狩猟、貞節と月の女神。ユーピテルとラートーナの娘で、アポローンの妹とする説がある。新月の銀の弓を手にする処女の姿が特徴。
――
仏教と動物たち
白象に乗るインドラ、7頭の獅子に坐す大日如来、白象に乗る普賢菩薩、動物に乗る虚空蔵菩薩、仏涅槃図に集まる動物たち。
【白象に乗るインドラ、東寺講堂】梵語名シャクローデーバーナーム・インドラ、 音訳で釈迦提婆因陀羅と呼ばれる。「シャクロー」の音訳「釈」と、インドラの意訳「帝王」から 帝釈天と呼ばれる。 古代神話の戦いの神インドラが元となり、 甲冑をまとい象に乗り金剛杵(ヴァジュラ)をとって毒龍と戦い、阿修羅に勝利し仏門に帰依させた英雄。一面三目二臂で金剛杵を持ち、白象に乗って半跏踏み下げの姿勢をとっている。(平安時代承和6年 839年)。
平安時代、承和6年(839年)に完成しましたが、頭部はすべて後補
【七頭の獅子に坐す大日如来】大日如来の台座に獅子を表す根拠。「中心毘瑠遮那如来。頭載五智宝冠、坐七獅子座上結跏趺坐、結界法印」(善無畏訳「尊勝仏頂修瑜伽法儀軌」巻上)。運慶は、建久8年(1197)に東寺の講堂の仏像の大規模な修復を行った。運慶が、密教の仏像の原点、東寺講堂の大日如来を意識していたことは間違いない。その姿にならってこの像と台座を作った。
――
北斎と霊獣、宇宙の源泉、鳳凰、麒麟、富士、波濤
【不屈の画狂老人卍】74歳にして画狂老人卍『鳳凰図屏風』(1835)、88歳『弘法大師修法図』、89歳『八方睨み鳳凰図』(1848)、90歳『富士越龍図』(1849)。90歳にして「天我をして五年の命を保たしめば、真正の画工となるを得べし」「画工北斎は畸人なり。年九十にして居を移すこと九十三所。」飯島虚心『葛飾北斎伝』。
――
【愛染明王真言】「唵、偉大なる愛染明王よ。決して破壊されない最高の仏智を備えた金剛薩埵よ。金剛薩埵と同一の、金剛鉤菩薩、金剛索菩薩、金剛鎖菩薩、金剛鈴菩薩よ。我々を仏智に導いて下さい。」
*大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
大久保正雄『永遠を旅する哲学者 イデアへの旅』
――
参考文献
著者:大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』
https:/
ベルリン・エジプト博物館所蔵「古代エジプト展 天地創造の神話」・・・絶世の美女ネフェルティティ王妃とアマルナ美術の謎
https:/
「密教彫刻の世界」東京国立博物館・・・愛染明王、金剛薩埵の化身
https:/
「国宝 東寺-空海と仏像曼荼羅」・・・空海、理念と象徴
https:/
「鳥獣戯画のすべて」・・・謎の絵巻、怪僧・明恵
https:/
高山寺「鳥獣戯画」・・・快僧、明恵の夢、40年間『夢記』
https:/
「新・北斎展」森アーツセンターギャラリー・・・悪霊調伏する空海、『弘法大師修法図』
https:/
「筆魂 線の引力・色の魔力─又兵衛から北斎・国芳まで─」・・・画狂老人卍『鳳凰図屏風』の思い出
https:/
『ライラの冒険 黄金の羅針盤』・・・守護精霊をもつ者、運命の羅針盤はどこに
https:/
生きものと共生する、神々、仏陀、動物と人間・・・守護精霊は降臨する
https:/
大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』184回
風薫る五月、花の匂いただよう森を歩いて、博物館に行く。伝真言院「両界曼荼羅」は、朱色と緑色の彩色が美しいと変化仏の神殿である。東寺の金剛薩埵は繊細な美しい手をしている。金剛波羅密、金剛宝、金剛法、金剛業、五菩薩の手は繊細で優美である。
狩野之信「花鳥図屏風」の前を通って、密教彫刻室に行く。愛染明王(rāgarāja. mahārāga)、大日如来(光徳寺)、西蔵のYab-yum像を見る。大日如来(光徳寺)には、成身会37尊が描かれている。
愛染明王(rāgarāja)は、三目六臂、憤怒相、智慧の弓と方便の矢を以って、衆生に愛と尊敬を与え、幸運を授ける。霊験は、無病息災、敬愛、降伏、鈎招、延命。
愛染明王は、両界曼荼羅に描かれていない。だが、金剛薩埵(vajrasattva)の化身である。
人間の生は、真の愛を探求する旅である。象徴派の藝術家は、人生をかけて愛する人を探している。愛と美の探求の果てに、何を見いだすのか。
「金剛界曼荼羅」「理趣会」は、金剛薩埵(vajrasattva)を中心とする集会、甘美で妖艶なエロスと智慧の香りである。
美は真であり、真は美である。これは、地上にて汝の知る一切であり、知るべきすべてである。
美しい夕暮れ。美しい魂に、幸運の女神が舞い降りる。美しい守護精霊が救う。美しい魂は、輝く天の仕事をなし遂げる。
*大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』
大久保 正雄『永遠を旅する哲学者 イデアへの旅』
――
1、愛染明王
【愛染明王】『金剛峯楼閣一切瑜珈瑜祇経』が説く、獅子冠をかぶり3つの目と6本の腕をもつ愛染明王。真赤な身色も、経典に日が輝く如しと説くことを典拠とする。めらめらと燃えるように逆立つ焔髪、眉を吊り上げ睨みつける目、牙を出して開く口に憤怒相。金剛薩埵菩薩の化身。
【愛染明王】『金剛峯楼閣一切瑜伽瑜祇経』「愛染王品第五」。愛染明王の修法は、息災・増益・敬愛・降伏の『四種法』の利益、その功徳は「能滅無量罪 能生無量福」「三世三界中 一切無能越 此名金剛王 頂中最勝名 金剛薩埵定 一切諸佛母」教主である金剛薩埵がこの尊を定めて、一切の諸仏の母とした)とも讃えられていて、これに基づいて金剛界で最高の明王と解釈される。
――
2、愛染明王真言
【愛染明王真言】「オーム、偉大なる愛染明王よ。金剛仏頂尊よ。決して破壊されない最高の仏智を備えた金剛薩埵よ。金剛薩埵と同一の、金剛鉤菩薩、金剛索菩薩、金剛鎖菩薩、金剛鈴菩薩よ。我々を仏智に導いてください。」oM ma hA raga vajro SHI Sa va jra satva jaH+jaH hUM vaM hoH
――
3、成身会、理趣会
【「金剛界曼荼羅」成身会】37尊。金剛界五仏、十六大菩薩、四波羅蜜菩薩、内外の四供養菩薩、四摂(ししょう)菩薩の以上37尊より構成され、これを四大神と賢劫千仏と二十天が囲む。金剛界五仏とは中央の大日如来、東方の阿閦如来、南方の宝生如来、西方の阿弥陀如来、北方の不空成就如来の五仏。四摂菩薩は、金剛鉤菩薩(Vajrankusa)、金剛索菩薩(Vajrapasa)、金剛鎖菩薩(Vajraśṛṅkhalā)、金剛鈴菩薩(Vajravesa)。
【八供養菩薩】金剛界曼荼羅の中央部の成身会で、大日如来が四仏に供養するため現出した嬉・鬘・歌・舞の四菩薩(内の四供)と、その外側に配されて四仏が大日如来を供養する香・華・灯・塗の四菩薩(外の四供)。
――
【「金剛界曼荼羅」⑦「理趣会」】全部で17人の菩薩。中央が、金剛薩埵。周りに、慾金剛菩薩、触金剛菩薩、慢金剛菩薩、愛金剛菩薩。その周りに、金剛香菩薩、金剛華菩薩、金剛燈菩薩、金剛塗菩薩。さらにその周りに、金剛嬉菩薩、金剛鬘菩薩、金剛歌菩薩、金剛舞菩薩。さらにさらにその周りに、金剛鉤菩薩、金剛索菩薩、金剛鎖菩薩、金剛鈴菩薩。 全部で17尊。
*大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』
大久保正雄『永遠を旅する哲学者 イデアへの旅』
――
展示作品の一部
重文 愛染明王坐像 1躯 鎌倉時代・13世紀
重文 大日如来坐像 1躯 鎌倉時代・12~13世紀 栃木・光得寺蔵
重文 大日如来坐像 1躯 平安時代・11~12世紀
チャクラサンヴァラ父母仏立像 1躯 中国・チベットまたはネパール 15~16世紀
重文 十一面観音菩薩立像 1躯 中国 奈良・多武峯伝来 唐時代・7世紀
――
4、無上瑜伽タントラ 慈悲と般若
Yab-yumは、男性尊格が蓮華座にて座し、伴侶がその腿に腰かける座位の構図。この交合の表現によって空性の智慧(女性原理、自利)と慈悲の方便(男性原理、利他)との一致を体現した仏陀の境地=大楽を表現。ヤブユムは無上瑜伽タントラと象徴主義が結びつき、男性像は「慈悲」(karuṇā) を与える男性原理である「方便」(upāya) 、その伴侶は女性原理である「般若」(prajñā) を象徴する。
――
参考文献
大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』
「国宝 東寺-空海と仏像曼荼羅」東京国立博物館・・・空海、理念と象徴
https://bit.ly/2Ov53Hz
東寺『金剛界曼荼羅』『胎蔵界曼荼羅』西院本・・・知恵と戦いの叙事詩、生命の根源
https://bit.ly/315UPn8
密教経典『理趣経』・・・空海と金剛界曼荼羅
https://bit.ly/2H2diKc
田中公明『曼荼羅イコノロジー』1987
石田尚豊『曼荼羅の研究』全2巻、東京美術、1975年
関根俊一『仏尊の事典、壮大なる仏教宇宙の仏たち』1997
――
愛染明王真言「オン・マカラギャ・バゾロシュニシャ・バザラサトバ・ジャク・ウン・バン・コク」
https://omajinai-navi.jp/aizen-myouou-mantra/
【不動明王、真言】【除霊や商売繁盛に効果抜群】「ノウマク サンマンダ バサラダン センダン マカロシャダ. ヤソハタヤ ウンタラタ カンマン」不動明王の真言は現世でご利益をもたらしてくれる。真言の意味は「憤怒の形相で強い力を持つ不動明王よ、私の迷いや厄を取り払い、願いを叶えてください」.。
―――
■密教彫刻の世界 、東京国立博物館
本館 14室 2019年3月19日(火) ~ 2019年6月23日(日)
https://www.tnm.jp/modules/r_exhibition/index.php?controller=item&id=5751
https://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1957
愛染明王、東京国立博物館
https://albireo190.blog.so-net.ne.jp/2013-09-03
ーー
画像
「愛染明王坐像」内山永久寺、奈良、鎌倉時代、13‐14世紀、東京国立博物館
「愛染明王像」康円作、鎌倉時代13世紀。京都神護寺から東京国立博物館に寄託。
画像出典「御朱印めぐりの旅日記」「風の詩SSブログ」
「大日如来坐像」運慶作、鎌倉時代12世紀、栃木、光得寺
「密教彫刻の世界」東京国立博物館・・・愛染明王、金剛薩埵の化身
https:/
大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』183回
風薫る五月、花の匂いただよう森、紫の躑躅咲く道を歩いて博物館に行く。1200年前からこの世に伝わる、両界曼荼羅の前に立つと、朱色と緑色の彩の美しい絨毯のようである。1909体の仏尊が眩く輝く宇宙。
密教の香りが立ち昇る。胎蔵界灌頂、金剛界灌頂、伝法阿闍梨位灌頂、秘密の儀式の意味は何か、美術史家は沈黙する。両界曼荼羅は、愛と戦いの叙事詩、知恵の樹を昇る、知恵の探求、知恵からの下降、金剛界から現世との戦い。胎蔵界は、生命の根源から花開く愛。図像に秘められた金剛界の戦い、知の階梯。向上門は、知恵への道、向下門は、真理からの降臨である。理念を探求する智者と現実との戦い。天人、人界、修羅と、畜生、餓鬼、地獄との戦い。
「人間の真の姿がたち現れるのは、運命に敢然と立ち向かう時である」シェイクスピア『トロイラスとクレシダ
美は真であり、真は美である。これは、地上にて汝の知る一切であり、知るべきすべてである。
美しい夕暮れ。美しい魂に、幸運の女神が舞い降りる。美しい守護精霊が救う。美しい魂は、輝く天の仕事をなし遂げる。
*大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』
大久保 正雄『永遠を旅する哲学者 イデアへの旅』
――
【空海の密教】即身成仏。理念を現実に実現する世界観。法身=大日如来、報身=阿弥陀仏、応化身=釈迦牟尼仏。5世紀までにはその本質永遠性と現実即応の関連づけ、すなわち統一が問題となり、それが仏身論に及び、法身と色身(応身)を合せた報身が立てられ、三身説(法身、応身、報身)が成立した。
【両界曼荼羅、「金剛界曼荼羅」】、成身会を中心に、三昧耶会、微細会、供養会、四印会、 一印会、理趣会、降三世会、降三世三昧耶会の九会からなる。知恵を表現する。
【両界曼荼羅、「胎蔵曼荼羅」】、中台八葉院を中心に、周囲に、遍知院、持明院、釈迦院、 虚空蔵院、文殊院、蘇悉地院、蓮華部院、地蔵院、金剛手院、除蓋障院が、同心円状にめぐり、すべてを囲む外周に外金剛部院(最外院)からなる。愛を表現する。
「真言秘蔵は経疏に隠密にして、図画を仮らざれば相伝すること能わず」(空海『請来目録』)
――
【金剛界曼荼羅の基本となる成身会】は、金剛界五仏、十六大菩薩、四波羅蜜菩薩、内外の四供養菩薩、四摂菩薩の以上37尊より構成され、これを四大神と賢劫千仏と二十天が囲む。(智拳印)一仏のみで表す他は、中心となる成身会、羯磨会の1061尊を含め合計約1500尊を配する。
【金剛界曼荼羅】智拳印の大日如来を中心に、阿閃、宝生、阿弥陀、不空成就の五智如来をはじめとする金剛界三十七尊を含む1500体。
【胎蔵界曼荼羅】法海定印の胎蔵界の大日如来、宝幢如来、開敷華王(かいふけおう)如来、無量寿如来、天鼓雷音、胎蔵界五仏を中心に409体が描かれる。
――
【五秘密】五秘密は真言宗に於ける金剛界所立の秘法にして、金剛薩埵(中)、慾金剛(東)、触金剛(南)、愛金剛(西)、慢金剛(北)の五金剛菩薩の称なり。此慾触愛慢の四字は煩悩の名なれども仏徳を表わすが故に悉く秘密の名字を付するよりこの五尊を以て五秘密とは名づくなり。
【『金剛界曼荼羅』理趣会、金剛薩埵】金剛薩埵は、若くて美しい女。欲・触・愛・ 槾 、美しい菩薩によって囲まれている。欲金剛女菩薩、触金剛女菩薩、愛金剛女菩薩、槾金剛女菩薩。
【理趣会、四金剛女菩薩】『理趣経』に基づき煩悩即菩提を実現する金剛薩埵を主尊とし、初段「十七清浄句」を代表する欲金剛、触金剛、愛金剛、慢金剛の四金剛菩薩を東南西北に配し、欲金剛女、触金剛女、愛金剛女、慢金剛女の四金剛女菩薩を東南・西南・西北・東北に配する集会。
大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
*大久保正雄『永遠を旅する哲学者 イデアへの旅』
――
空海と嵯峨天皇、空海と最澄、嵯峨天皇と平城上皇
【空海と最澄、第16次遣唐使】延暦23(804)年、第1船、遣唐大使・藤原葛野麿。空海は第1船に乗船。第2船、副使・石川道益(入唐後に没)乗船。最澄は第2船。最澄は、桓武天皇の勅命により遣唐僧、空海は私度僧。他の2船は遭難、沈没。
【乙訓寺、空海】弘仁2年(811)、嵯峨天皇により空海(弘法大師)が乙訓寺の別当に任ぜられた。翌年弘仁3年10月に最澄が立ち寄り、二人が初めて出会う。最澄46歳、空海36歳。
【空海、『理趣釈経』借覧拒否】最澄は、弘仁4年(813年)11月23日、『理趣経』の注釈書である不空の『理趣釈経』を借覧しようとしたが、空海は断る。空海『答叡山澄法師求理趣釈経書』(『遍照発揮性霊集』)
【空海、最澄と決裂】弘仁4(813)年、『理趣釈経』借覧拒否。最澄に答えた書簡。「古の人は道の為に道を求め、今の人は名利の為に求む。名の為に求むるは、道を求むる志にあらず。」「夫れ秘蔵の興廃は唯汝と我なり」空海『答叡山澄法師求理趣釈経書』
【嵯峨天皇、高野山勅許】弘仁7(816)年、七月八日 高野山開創の勅許を賜る。この年、『弁顕密二教論』(816)。弘仁14年(823)に嵯峨天皇より東寺を賜る。真言密教、真言陀羅尼宗の根本道場、教王護国寺とした。
【嵯峨天皇と平城上皇の戦い】810年(弘仁1)年9月10日に天皇は仲成を逮捕、佐渡権守に貶降、薬子を追放に処す。対して上皇は薬子とともに平城京から東国に向かい対抗、坂上田村麻呂らが迎撃態勢。平城京に戻り剃髪し、薬子は自殺。乱は3日間で終息。
――
空海『秘密曼荼羅十住心論』(830)は、蛭牙公子の水準を第1住心、亀毛先生(儒)の水準を第2住心、虚亡隠士(道)の水準を第3住心とし、仮名乞児(仏)の水準を第4住心から第10住心までの7つに細分化している。7つのうち、第4(声聞)と第5(縁覚)は小乗仏教、第6から第10まで(法相・三論・天台・華厳・真言)は大乗仏教、第10の真言だけが密教で、他の6つは顕教とされている。『三教指帰』(797)と『十住心論』(830)はつながっている。(上山春平)
空海『秘蔵宝鑰』目次
第一、異生羝羊心
凡夫狂酔して 吾が非を悟らず。但し婬食(いんじき)を念ずること 彼の羝羊の如し。
第二、愚童持斎心
外の因縁に由って 忽ちに節食(せつじき)を思う。施心萌動(ほうどう)して 穀の縁に遇うが如し。
第三、嬰童無畏心
外道天に生じて 暫く蘇息を得。彼の嬰児と 犢子との母に随うが如し。
第四、唯蘊無我心
ただ法有を解(げ)して我人皆遮す。羊車の三蔵 ことごとくこの句に摂す。
第五、抜業因種心
身を十二に修して 無明、種を抜く。業生、已に除いて 無言に果を得。
第六、他縁大乗心
無縁に悲を起して 大悲初めて発る。幻影に心を観じて 唯識、境を遮す。
第七、覚心不生心
八不に戯(け)を絶ち 一念に空を観れば、心原空寂にして 無相安楽なり。
第八、一道無為心
一如本浄にして境智倶(とも)に融す。この心性を知るを号して遮那という。
第九、極無自性心
水は自性なし 風に遇うてすなわち波たつ。法界は極にあらず。警を蒙って忽ちに進む。
第十、秘密荘厳心
顕薬塵を払い、真言、庫を開く。秘宝忽ちに陳じて 万徳すなわち証す。
――
【空海】「現実に現身のままで大日如来になる。」(『即身成仏義』)空海は「法身仏、普遍的な存在が説法をする」と説く。釈迦牟尼の教えを超え、釈迦牟尼の悟りを成り立たせる真理そのものを仏(法身)として、教えの主体にした。『空海・生涯と思想』
――
【『大日経』】『大毘盧遮那成仏神変加持経』は、善無畏(Śubhakarasiṃha、637-735)と唐の学僧たちによって724年に漢訳された。しかし、サンスクリット原本はまだ発見されていない。【『金剛頂経』】不空三蔵(705-774)がサンスクリット原本から訳した『金剛頂一切如来真実摂大乗現証大教王経(大教王経)』がある。
――
参考文献
大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
密教経典『理趣経』・・・空海と金剛界曼荼羅
https://bit.ly/2H2diKc
空海『即身成仏義』、大日如来の知恵 五智如来の知恵
https://bit.ly/2O8YtbU
関根俊一『仏尊の事典、壮大なる仏教宇宙の仏たち』1997
石田尚豊『曼荼羅の研究』全2巻、東京美術、1975年
東寺伝の曼荼羅図No273
https://blog.goo.ne.jp/yoshi_iltuki/e/e5881de0e90574b03369fd8125da0d7c
一印会 毘盧遮那如来
――
展示作品の一部
国宝 両界曼荼羅図、金剛界、胎蔵界、(西院曼荼羅[伝真言院曼荼羅]) 平安時代・9世紀 京都・東寺蔵
展示期間:4月23日(火)~5月6日(月・休)
https://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1938
――
★「国宝 東寺-空海と仏像曼荼羅」、東京国立博物館、
2019年3月26日(火)~6月2日(日)
大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』第176回
桜の森を歩いて博物館に行く。白象に乗る帝釈天騎象像、六面六臂六足の大威徳明王騎牛像、七頭の獅子に乗る大日如来、鳥獣に乗る金剛界仏、幻の密教空間が蘇る。東寺、講堂における立体曼荼羅の意味は何か。金剛界曼荼羅、『即身成仏義』『理趣経』を紐解くと謎を解く鍵がある。空海(774-835)が追求した理念は何か。
【旅する思想家、美への旅】空海は理念を探求して旅した。空海の24歳の苦悩は『聾瞽指帰』に刻まれている。空海、プラトン、玄奘三蔵、李白、王羲之、嵯峨天皇、ロレンツォ・デ・メディチ、理念に向かって旅する旅人。理念を追求する人は、この世の闇の彼方に美を求める。
―
【東寺、講堂における立体曼荼羅】五智如来と明王の象徴は何を意味するのか。1、五智如来、大日、宝生、阿弥陀、不空成就、阿閦。2、五菩薩、金剛波羅密、金剛宝、金剛法、金剛業、金剛薩埵。3、五大明王、不動明王、降三世、軍荼利、大威徳、金剛夜叉。4、四天王、持国天、増長天、広目天、多聞天。5、二天、梵天、帝釈天。
*大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』
大久保正雄『永遠を旅する哲学者 イデアへの旅』
――
【空海、理念と象徴、密蔵深玄翰墨難載。更仮図画開示不悟】密教の理念は、象徴によって表現される。「法は本より言(ごん)なけれども、言にあらざれば顕われず。真如は色(しき)を絶すれども、色を待ってすなわち悟る。(略)密蔵深玄にして翰墨(かんぼく)に載せがたし。さらに図画を仮りて悟らざるに開示す。種々の威儀、種々の印契(いんげい)、 大悲より出でて一覩(いっと)に成仏す。経疏に秘略にしてこれを図像に載せたり。密蔵の要、実にここに繋(かかれり)。伝授受法、これを棄てて誰ぞ。『御請来目録』
【物の興廃は必ず人に由る。人の昇沈は定めて道に在り。空海】物の栄えるか衰えるかは、それに関わる人の人柄と能力と智慧と努力による。また人の成功・失敗、浮き沈みは、その人が歩む道による。不正な道を歩いて栄える者には天罰が下る。口先、外面だけの人には、天罰が下る。「物之興廃必由人 人之昇沈定在道」空海『綜藝種智院式』『性霊集』
【空海、波瀾の遣唐船、謎の生涯】24歳で『聾瞽指帰』を書く。57歳で『秘蔵宝鑰』を書く。大学入学18歳から31歳、遣唐使、留学僧、入唐まで、大学中退、山林修行、謎の12年間。宝亀5年(774)6月15日生まれる。承和2年(835) 4月22日入定、62才。
24歳で『聾瞽指帰』797年を書く。57歳で『秘蔵宝鑰』830年
【空海、聖なる者は悪を滅ぼす】『理趣経』第三段。金剛手よ、もし理趣を聞きて受持し読誦することあらば、たとえ三界の一切の有情を害するも悪趣に堕せず。
――
【密教は、法身、大日如来が説いた教え】【仏陀の身体には、三身(法身・報身・応化身)がある】法身、大日如来。報身、仏陀となるための因としての行を積み、その報いとしての完全な功徳を備えた仏身。仏陀釈迦牟尼、応化身。
「仏に三身(法身・報身・応(化)身)あり。教は二種(顕教・密教)なり。応化の開説を名づけて顕教という。ことば顕略にして機に逗えり。法仏の談話これを密蔵(密教)という。ことば秘奥にして実説なり。」空海『弁顕密二教論』
空海『即身成仏義』。六大、無碍にして常に瑜伽たり。 四種の曼荼羅、各々離れず。三密加持すれば速疾に顕わる。重々たる帝網、名付けて即身という。
【因陀羅網】インドラ、すなわち帝釈天の宮殿を飾っている網。その網の結び目には宝玉がついており、それぞれが互いに反映している。華厳宗の説く、すべての事物が無限に交渉し、通じあっているとする事事無礙法界の比喩としてよく用いられる。『華厳五教章』
――
【空海と嵯峨天皇】大同4年(809)、4月3日神野親王が践祚、13日に即位式を挙げ嵯峨天皇となる。即位。7月16日、空海は、太政官符により高雄山寺に入住勅許。弘仁7年(816)嵯峨天皇から高野山を修行の地として賜り、金剛峯寺を開創した。空海は、弘仁14年(823)に嵯峨天皇より東寺を賜る。真言密教、真言陀羅尼宗の根本道場、教王護国寺とした。空海(774-835)は62歳で入定。嵯峨天皇(786-842)は、7年後世を去る。
――
参考文献
大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
密教経典『理趣経』・・・空海と金剛界曼荼羅
https://bit.ly/2H2diKc
空海『即身成仏義』、大日如来の知恵 五智如来の知恵
https://bit.ly/2O8YtbU
関根俊一『仏尊の事典、壮大なる仏教宇宙の仏たち』1997
――
展示作品の一部
国宝「立体曼荼羅」東寺講堂、平安時代、承和6年(839)。2、五菩薩、3、五大明王、4、四天王、5、二天、
重要文化財 弘法大師像(談義本尊)賛 伝後宇多天皇筆 鎌倉時代・14世紀 東寺蔵
国宝 風信帖(第一、第二、第三通) 空海筆 平安時代・9世紀 京都・東寺蔵
国宝 空海撰「請来目録」最澄筆、平安時代9世紀、東寺蔵
国宝 金剛密教法具 中国 唐時代・9世紀 京都・東寺蔵
国宝 金剛密教法具 金剛盤、金剛五鈷鈴、金剛五鈷杵、中国 唐時代・9世紀 京都・東寺蔵
蘇悉地儀軌契印図 1巻 中国 唐時代 咸通5年(864年)東寺蔵
国宝 降三世明王(五大尊像)平安時代・大治2年(1127)東寺蔵
国宝 十二天屛風 平安時代・建久2年(1191) 京都・東寺蔵
国宝 両界曼荼羅図、金剛界、胎蔵界、(西院曼荼羅[伝真言院曼荼羅]) 平安時代・9世紀 京都・東寺蔵
国宝 兜跋毘沙門天立像 中国 唐時代・8世紀 京都・東寺蔵 平安京の羅城門に安置
重要文化財 五大虚空蔵菩薩坐像、金剛虚空蔵菩薩、法界虚空蔵菩薩 中国 唐時代・9世紀 東寺蔵
後七日御修法(ごしちにちみしほ)。1月8日から7日間、宮中真言院で行われた真言宗の重要な儀式。元日から7日までの節会の後、7日間の修法から後七日といい、真言院御修法、後七日法ともいう。834年(承和1)空海が勅命により大内裏中務省において始行、同年空海が上奏、唐の不空の例にならって宮中に真言院が造立された。慶応3年1867年以降、現在は、東寺、灌頂院において行われる。『国宝 東寺-空海と仏像曼荼羅』図録P65
――
★「国宝 東寺-空海と仏像曼荼羅」、東京国立博物館、
3月26日(火)~6月2日(日)
https://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1938
大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』第174回
智慧によって、現実の世界と戦う。智慧をこの世界に実現する。これが金剛界のテーマである。 『般若理趣経』は、「般若の知恵に至るための道筋」、智慧の究極に至る道筋である。
『理趣経』の教主は、大日如来であり、その場所は、欲界、第六天、他化自在天である。三界(無色界、色界、欲界)のうち、欲界の支配者が第六天魔王。織田信長は、第六天魔王と自ら称した1573(元亀4)年。*六道輪廻の天道の最下天が他化自在天。
蓮華が泥から咲きいでて、花は汚れに汚されず、すべての欲もまた同じ。そのままにして人を利す。
不空が763年から771年に訳した、不空訳『大楽金剛不空真実三摩耶経』が読誦されている。サンスクリット語原典『般若波羅蜜多理趣百五十頌』(初会『金剛頂経(真実摂経)』『理趣広経』)の訳とされる。
自性清浄の思想を説く経典であるためこの理趣経をめぐって事件が起こった。(十七清浄句が問題とされた)。
空海と最澄
最澄は、弘仁4年(813年)11月23日、『理趣経』の注釈書である不空の『理趣釈経』を借覧しようとしたが、空海は丁重に断った。空海『答叡山澄法師求理趣釈経書』(『遍照発揮性霊集』)
――
1、五成就
序文、誰が《教主》、いつ《時》、どこで《住処》、誰のために《衆》、どのような内容《信》を説いたかという《五成就》が示される。
『般若理趣経』経典の《教主》は五智(大円鏡智・平等性智・妙観察智・成所作智・清浄法界智)を具えた大毘盧遮那如来であり、《時》はあるとき、《住処》は三界(欲界、色界、無色界)のうち欲界の最頂上にある他化自在天である。
そして、八大菩薩(金剛手、観自在、虚空蔵、金剛拳、文殊師利、纔発心転法、虚空庫、 摧一切魔)を筆頭に、《衆》すなわち数え切れないほど多くの菩薩衆に対して、一切法の清浄句門(=現実の一切の世界は自他の対立を離れた清浄な世界である)という《信》が説かれる。
――
2、初段、「妙適清浄の句、これ菩薩の位なり」で始まり、慾箭・觸・愛縛・見・適悅・愛・慢・莊嚴・意滋澤・光明・身樂・色・声・香・味という男女の合体の経過になぞらえた16の清浄の句も菩薩の位である。(妙適=男女合体の喜び)。
*17清浄句
初段、金剛手を相手に大毘盧遮那が説き、金剛薩埵が「吽」という種字にまとめる。密教の世界では、金剛手も大毘盧遮那も金剛薩埵も同一。
――
3、【『般若理趣経』第三段】「もしこの理趣を聞きて受持し読誦することあらば、たとひ三界の一切の有情を害すも悪趣に堕せず」
空海【聖なる者は悪を滅ぼす】【『理趣経』「第三段」】の教説に関して不空訳『理趣釈』において三界の衆生とは三毒の煩悩と注釈されているが、当該注釈の方向性は空海にも継承され、空海は三界の衆生を害することとは三界の無明を断じることに他ならないとしている。*三毒。貪欲・瞋恚・愚痴。貪瞋痴。
「三界の一切の衆生を害しても、般若理趣の法門を奉じているならば、悪趣に墜ちることは無い」と説かれる。
【『般若理趣経』】「たとひ広く積習するも必ず地獄等の趣に堕せず、たとひ重罪を作るとも消滅せんこと難からず(初段)」「たとひ現に無量の重罪を行ずとも必ず能く一切の悪趣を超越す(第二段)」【『般若理趣経』】「もしこの理趣を聞きて受持し読誦することあらば、たとひ三界の一切の有情を害すも悪趣に堕せず(第三段)」
――
4、第十七段「百字の偈」
菩薩勝慧者乃至盡生死恒作衆生利而不趣涅槃
般若及方便智度悉加持諸法及諸有一切皆清浄
欲等調世間令得浄除故有頂及悪趣調伏盡諸有
如蓮體本染不為垢所染諸欲性亦然不染利群生
大欲得清浄大安楽富饒三界得自在能作堅固利
菩薩は勝れし知慧を持ち、なべて生死の尽きるまで恒に 衆生の利をはかり、たえてねはんに趣かず。
般若及方便、智慧の及ばぬものはなし。もののすがた[=有]も、そのもの[=法]も、一切のものは皆清浄し。
欲が世間をととのえて、よく浄らかになすゆえに、有頂天 もまた悪も、みなことごとくうちなびく。
蓮の体は本染にして、垢(く)の為に染せられざるが如く、諸欲の性も亦然(しか)なり。不染にして群生(ぐんじょう)を利す。
そのままにして人を利 大なる欲は清浄なり、大なる楽に富み饒う。三界の自在身につきて、固くゆるがぬ利を得たり
*五秘密菩薩の境地を詩で表現した。
――
5、五秘密の悟り、深秘の法門、五秘密の巻、『理趣経』17段、
五秘密の教え。金剛薩堙を欲触愛慢の金剛菩薩が囲む。欲金剛、触金剛、愛金剛、慢金剛の四金剛菩薩を東南西北に配し、欲金剛女、触金剛女、愛金剛女、慢金剛女の四金剛女菩薩を東南・西南・西北・東北に配する集会。
五秘密の教えを図解したのが金剛界曼荼羅「理趣会」である。
――
【欲界、六欲天の天人の楽しみ】第六天、他化自在天、他者を楽しませる事を楽しむ。化楽天、自ら楽しみを作り出す。兜率天、宇宙の法則を楽しむ。夜摩天、自然を楽しむ。忉利天、秩序を維持する事を楽しむ。四大王衆天、敵と戦って世界を守る事を楽しむ。
――
空海と真言密教 参考文献
空海の旅 旅する思想家、美への旅
https://t.co/HPPpp3e5iL
旅する思想家、孔子、王羲之、空海と嵯峨天皇
https://bit.ly/2zsD05T
金剛界曼荼羅の五仏、五智如来、転識得智、仏陀への旅
https://t.co/MIXigqe3xH
空海『即身成仏義』、大日如来の知恵 五智如来の知恵
https://bit.ly/2O8YtbU
無我説と輪廻転生、仏教の根本的矛盾・・・識體の転変、種子薫習。名言種子、我執種子、有支種子
https://bit.ly/2U9rO6s
――
「京都・醍醐寺-真言密教の宇宙-」・・・醍醐寺三宝院、織田信長のために祈祷する
https://bit.ly/2NHbWso
六道輪廻、六観音菩薩
「京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ」東京国立博物館、・・・純粋な美しい魂に舞い降りる
https://bit.ly/2C0ZL2f
空海と密教美術展・・・理念と象徴
https://bit.ly/2Dygyvp
――
参考文献
金岡秀友『理趣経』世界古典文学全集、筑摩書房
宮坂宥勝『密教経典』『理趣経』講談社学術文庫
松長有慶『秘密の庫を開く―密教経典 理趣経』
金剛界曼荼羅「理趣会」
http://www.mikkyo21f.gr.jp/mandala/mandala_kongoukai/07.html
http://blogyang1954.blog.fc2.com/blog-entry-1799.html
https://piicats.net/rishunaiyou.htm
大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』第157回
醍醐寺の黄衣の12人の僧侶が、法螺貝を吹いて来て「薬師如来、日光菩薩、月光菩薩」の前で、法要、読経した。サントリー美術館が寺院のようである。醍醐寺の枝垂れ桜を思い出す。桜満開の京都、仁和寺に滞在して花盛りの密教寺院、禅宗寺院をめぐり歩いた日々。醍醐寺三宝院、桃源郷の庭園。如意輪観音は、如意宝珠を手にもつ密教変化観音である。如意宝珠は生きものの願いをかなえる。
密教僧は、開運招福、学問成就、健康長寿、怨敵調伏、大願成就、を祈る。高貴な精神は、聖なる目的を達成するために、敵を滅ぼさねばならない。真言密教の真言と秘法は、苦悩する人のために、祈祷、救済する。『戦う知識人の精神史』
空海は、大同元年(806年)10月、唐から帰国し真言密教の経典、秘法を日本に伝えた。だが中国においては、密教は滅びた。醍醐寺は、戦国時代、織田信長のために祈祷した。
――
【醍醐寺三宝院 天正元(1573)年】織田信長のために真言密教の祈祷、修法を行う。「織田信長黒印状」醍醐寺三宝院における戦勝祈願の修法への礼状を信長より返信。「天下布武」印がある。
【織田信長 天正元年】三方が原の戦い、信長と家康は信玄を迎え撃つが敗退。だが、信長包囲網に参加すべく上洛する武田信玄は死す(1573)。信長包囲網、瓦解。
【醍醐の花見】1598年(慶長3)3月15日,京都の醍醐寺三宝院で豊臣秀吉が花見の宴を催した。この年8月に秀吉が病死した。
高貴な精神は、聖なる目的を達成するために、敵を滅ぼさねばならない。悪と戦い生き残らねばならない。遍在する悪と戦う知的で革命的な精神は、知恵と愛が根源である。
*大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』
――
★展示作品の一部
国宝「薬師如来坐像」醍醐寺、平安時代10世紀
国宝「虚空蔵菩薩立像」醍醐寺、平安時代10世紀
「如意輪観音坐像」醍醐寺、平安時代10世紀
「織田信長黒印状」醍醐寺、安土桃山、16世紀、天正元(1573)年か。(醍醐寺文書聖教558函36号)醍醐寺三宝院における戦勝祈願の修法への礼状。「天下布武」の印が捺されている。三宝院から戦陣の信長に「祈祷の巻数」が送られ、それに対する返書。密教の祈祷を修法した「祈祷の巻数」は護符である。信長が出した礼状である。筆跡は、信長の祐筆を長年務めた武井夕庵のものと思われる。天正三年以降、祐筆は楠長諳に移行する。醍醐寺には、この他「織田信長朱印状」醍醐寺、安土桃山、1572年(醍醐寺文書聖教24函102号)がある。*『京都・醍醐寺-真言密教の宇宙-』図録
空海筆「大日経開題」9世紀。
「金天目・天目台」桃山時代・16世紀、醍醐寺第80代座主の義演が秀吉の病気平癒を祈願した褒美として与えられた品。
快慶「不動明王坐像」1203年
「醍醐花見短冊」安土桃山、慶長三年1598年
足利尊氏筆「理趣経」南北朝1357年
――
★参考文献
空海の旅 旅する思想家、美への旅
https://t.co/HPPpp3e5iL
旅する思想家、孔子、王羲之、空海と嵯峨天皇
https://bit.ly/2zsD05T
大日如来の知恵 五智如来の知恵
https://bit.ly/2O8YtbU
『京都・醍醐寺-真言密教の宇宙-』図録。
――
★「京都・醍醐寺-真言密教の宇宙-」
サントリー美術館、2018年9月19日(水)~11月11日(日)
九州国立博物館 2019年1月29日(火)~3月24日(日)
大久保正雄「旅する哲学者 美への旅」第90回
金剛界曼荼羅の五仏、五智如来、仏陀への旅
人はいかにして仏陀となるのか。人を苦から解き放つものは何か。人間の苦悩と悲しみを超え、魂を癒すものは何か。智慧か、愛か。人はいかにして如来となるのか。仏陀に到る修行の方法は何か。金剛界曼荼羅は、大日如来になる方法を示しているのか。
人間界、激しい競争社会、生き残りは至難である。競争に齷齪する人間界。競争を超えていかに真理に辿りつくのか。
*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』
美への旅、知恵の旅、時空の果てへの旅、魂への旅。
美は真であり、真は美である。これは、地上にて汝の知る一切であり、知るべきすべてである。
はちみつ色の夕暮れ、黄昏の丘、黄昏の森を歩き、迷宮図書館に行く。糸杉の丘、知の神殿。美しい魂は、光輝く天の仕事をなす。美しい女神が舞い下りる。美しい守護精霊が、あなたを救う。
*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』
*大久保正雄『永遠を旅する哲学者 美のイデアへの旅』
■転識得智 識は智に転ずる
修行の結果悟りを開き仏になると、八つの「識」は「智」に転ずる。転識得智という。
唯識では成仏に三大阿僧祇劫の修行が必要だとされる。その階梯は、資糧位、加行位、通達位、修習位、究竟位)の五段階である。
八識が転じて四智になる。
阿頼耶識は、大円鏡智になる。
末那識は、平等性智になる。
第六識は、妙観察智になる。
前五識(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)は、成所作智になる。
大円鏡智は、すべての知の根源で、平等性智以下の智を生みだす。
阿頼耶識は、すべての識の根源で、末那識以下の識を生みだす。
■金剛界の五仏、五智如来、五智
五智とは、法界体性智、大円鏡智、平等性智、妙観察智、成所作智。
金剛界曼荼羅には、五智如来が描かれている。
★大日如来は、法界体性智をもつ。
法界体性智は、自性清浄なる大日如来の絶対智であり、他の四智を統合する智恵である。
*法界体性智=自性清浄心と呼ばれる第9識(阿摩羅識)
★阿閦如来は、大円鏡智【鏡の如く法界の万象を顕現する智】をもつ。
*大円鏡智=阿頼耶識 第8識
★宝生如来は、平等性智【諸法の平等を具現する智】をもつ。
*平等性智=末那識 第7識
★無量寿如来は、妙観察智【諸法を正しく見極め、追求する智】をもつ。
*妙観察智=意識 第6識
★不空成就如来は、成所作智【自他のなすべきことを成就せしめる智】をもつ。
*成所作智=前5識(眼識、耳識鼻識、舌識、身識)、五感(眼、耳、鼻、舌、身)による感覚作用である。
★転識得智 9識は『金剛頂経』の説く瞑想法(五相成身観)によって各々五智に転じる。五相成身観とは、行者の汚れた心を、瑜伽の観法を通じて見きわめ、その清浄な姿がそのまま如来の智慧に他ならないことを知り、如来と行者が一体化して、修行者に本来そなわる如来の智慧を発見する。
■金剛界曼荼羅
中央に中心となる「成身会」があり、その下に「三昧耶会」、その左に「微細会」、その上に「供養会」、その上に「四印会」、その右に「一印会」、その右に「理趣会」、その下に「降三世会」、その下に「降三世三昧耶会」。成身会から下るのを向下門。降三世三昧耶会から上るのを向上門。金剛界曼荼羅を成身会へいかにして上るのか。
「成身会」「三昧耶会」「微細会」「供養会」「四印会」「一印会」「理趣会」『金剛頂経』金剛界品に、「降三世会」「降三世三昧耶会」が降三世品に拠る。
■金剛界曼荼羅、理趣会
即身成仏の思想が図示されている。
『理趣経』17段【深秘の法門 】五種秘密三摩地の章【五秘密尊】金剛薩埵の周りに、金剛欲明妃、金剛蝕明妃、金剛愛明妃、金剛慢明妃、4の明妃が囲む。
『理趣経』第一段、第一七段に理趣経の核心、密教の思想が集約されている。
『理趣経』1段、【大楽の法門】金剛薩埵の章、十七清浄句
『理趣経』17段、【深秘の法門】五種秘密三摩地の章【五秘密菩薩】
■唯識
諸存在が、唯(ただ)、八種類の識によって成り立っている。*瑜伽行唯識学派の思想。唯識論。唯識無境。ただ識だけがあって外界は存在しない。
「唯識三年、倶舎八年」。倶舎論を八年学べば、唯識は三年でわかる。唯識学には十一年かかる。結城令聞*
■薫習、種子薫習
阿頼耶識に薫ぜられて迷界を顕現する種子について三種の薫習が説かれている。*無着『摂大乗論』。第一、名言種子。第二、我執種子。第三、有支種子。
「薫習の義とは、衣服に香なし、もし人、香をもって熏習するに、すなわち香気あるが如し」*『大乗起信論』
仏教の根本問題は、無我説と輪廻転生の矛盾である。無我説と輪廻転生の矛盾をいかに解決するのか。
輪廻生死の主体は、阿頼耶識である。
―――――
空海の旅 旅する思想家、美への旅
https://t.co/HPPpp3e5iL
宮澤賢治 輝く天の仕事 美への旅
https://t.co/MCQLkf9YVW
島薗進×大久保正雄『死生学 人の心の痛み』
https://t.co/EYgwLuMvWz
―――――
★参考文献
宮坂宥勝『密教経典』筑摩書房
宮坂宥勝・梅原猛『生命の海 空海』角川書店1968
松長有慶『秘密の庫を開く―密教教典 理趣経』集英社1984
松長有慶『理趣経』中公文庫
横山紘一『唯識の哲学』平楽寺書店1976
横山紘一『唯識思想入門』1976
竹村牧男『唯識の構造』春秋社1985,2001
服部正明・上村春平『認識と超越<唯識>』角川書店角川文庫1997
高崎直道『唯識入門』1992
東寺『金剛界曼荼羅』西院本
東寺『大悲胎蔵生曼荼羅』西院本
無着『摂大乗論』
不空訳『大楽金剛不空真実三摩耶経』
『百字の偈』理趣経17段
金剛界曼荼羅
http://www.mikkyo21f.gr.jp/mandala/mandala_kongoukai/index.html
★東寺『金剛界曼荼羅』
★『金剛界曼荼羅』、理趣会
大久保正雄2016年8月25日
イギリス美術 イタリア エジプト エーゲ海 ギリシア ギリシア悲劇 ギリシア神話 シュールレアリスム スペイン スペイン美術 トルコ ハプスブルク バロック ビザンティン帝国 ファッション・アクセサリ フェルメール フランドル美術 ペルシア帝国 マケドニア ヨーロッパ美術 ルネサンス ロシア美術 ロマン主義 ローマ帝国 中国美術 仏教 印象派 名言集 哲学 国家戦略 国際政治 地中海 奇想の系譜 安土桃山 密教美術 年代記 建築 戦国時代 新古典主義 新年 日本画 日本美術史 映画・テレビ 死生学 民藝 江戸時代 洋画 浮世絵 現代美術 理念 目次 精神史 織田信長 美術史 美術展ベスト10 美術館スケジュール 自然科学 芸術論 著作目録 著者 詩集 象徴派
最近のコメント