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2025年5月 9日 (金)

手塚治虫『火の鳥』・・・火の鳥の血と不死、永遠の孤独、不滅の愛

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大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』第400回
手塚治虫(1928~89)は、『百物語』971不破臼人と魑魅(スダマ)の契約と蘇りを描き、1967年火の鳥黎明編を描き、遺作『ネオ・ファウスト』1988で老教授と魔女メフィストとの契約と若返りを描いた。魂の運命と生と死、蘇り、不老不死、哲学的、宗教的な問題を問い続けた。
1967年火の鳥黎明編、1967年火の鳥未来編、1968年火の鳥ヤマト編、1969年火の鳥宇宙編、1969年火の鳥鳳凰編、1970年火の鳥復活編、1971年火の鳥羽衣編、1971年火の鳥望郷編(COM版)、1973年火の鳥乱世編(COM版)、1976年火の鳥望郷編、1978年火の鳥乱世編、1980年火の鳥生命編、1981年火の鳥異形編、1986年火の鳥太陽編
★火の鳥シリーズ 1954 – 1988

『火の鳥』と『ファウスト』
夢を実現するため、力を手に入れる、悪魔と取引して「魂と引き換えに、若さを手に入れる」学識はあるが、力はない、老博士ファウスト。手塚治虫は『ファウスト』の苦悩を、『百物語』の不破臼人、『ネオ・ファウスト』、晩年に至るまで描き続けた。
不死を手に入れるために、火の鳥の血を飲もうとする。若者ウラジ。手塚治虫『火の鳥』黎明編。火の鳥の血と不死のテーマ。手塚治虫『火の鳥』未来編。マサトと人造人間タマミ、二人の愛は成就するのか。タマミは、『火の鳥(未来編)』で、人間の娘に変身したシリウス十二番星原産の不定形生物ムーピー。ムーピーは催眠超音波でリアルな幻覚を見せる能力のため、人間を堕落させるものとして飼育を禁止されていた。猿田博士は、絶滅した生物をよみがえらせようと、ひとり人工生命の研究をしていた。マサトとタマミの愛は復活するのか。
『火の鳥 未来編』
西暦3404年。人類は、戦争での放射能に汚染された地上から地下都市に移住した。マサトは、不定形宇宙生物・ムーピーが姿を変えた美少女・タマミと共に地下都市・ヤマトから脱出する。二人は地上で人工生命を研究する猿田博士のもとにたどり着く。その頃、地下都市ではコンピューター同士による最終戦争が勃発する。地下都市全てが壊滅し、火の鳥の生き血を飲んで不老不死となったマサトと、ムーピーであるタマミのみを残し、人類は滅亡してしまう。
タマミも力尽き、世界にはマサトのみが残された。永遠の生命を持つマサトは死ぬことができず、他の生命を求めて孤独の世界を彷徨う。5000年間ものあいだ眠り続ける女性を発見したマサトは5000年後に女性が目覚めることを心の支えとするが、ついに会うことはできなかった。そして、何億年という果てしのない永い年月を経て、マサトという一個の有機体を起点に新たな生命が地球上に誕生する。
不死の命を手に入れた若者、死ぬことができないために、永遠の孤独を抱き、人類の滅亡の果てまで生き続ける。手塚治虫『火の鳥』未来編。
【美しい王女を手に入れるイワン王子】魔王カスチェイを倒すため、魔王の庭にやってきて火の鳥に会い、火の鳥の魔法の羽を手に入れ、魔王と戦い美しい王女ツァレヴナと結婚する(ストラヴィンスキー『火の鳥』1910)。

『火の鳥』とギリシア哲学 生と死の哲学
火の鳥の物語は、ギリシア哲学を想起する。プラトン『パイドン』『パイドロス』『饗宴』『国家』、エンペドクレス『カタルモイ』<魂と万物の4つの根(リゾーマタ) 宇宙円環と魂の円環の調和』>。「魂の不死不滅、輪廻転生、学問は永遠の記憶を想起する」。
大久保正雄『プラトン対話篇 生と死の哲学』『プラトン哲学における愛(エロース)と死(タナトス)』。
*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
大久保正雄『永遠を旅する哲学者 イデアへの旅』
――
1、手塚治虫『火の鳥』のテーマは何か。
「人間は永遠に孤独である、愛はつかの間の夢」「火の鳥の血を飲むことによって不老不死となる」。「魂は不死不滅、輪廻転生、学問は永遠の記憶を想起する」。「知恵と愛の探求、不老不死の探求」異形の者との魂の愛、藝術家が作品を作ることによって不滅となる、「生命とは何か、意識とは何か、精神とは何か、宇宙とは何か」。人類は殺し合い止めず、どのような末路を迎えるのか。
*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
大久保正雄『永遠を旅する哲学者 イデアへの旅』
――
2、『火の鳥』とは何か
手塚治虫『火の鳥』、ストラヴィンスキー。
ディアギレフ率いるロシア・バレエ団。その中核となったのが、まだ無名だったストラヴィンスキーによる〈火の鳥〉〈ペトルーシュカ〉〈春の祭典〉。この3大バレエは、その質においても、破壊的なエネルギーと影響力の凄まじさにおいても、19世紀後半にワーグナーが〈トリスタンとイゾルデ〉で成し遂げたのに比肩すべき核爆弾的な役割を果たしたのであった。
【手塚治虫『火の鳥』、ストラヴィンスキー】手塚治虫(1928~89)はストラヴィンスキー(1882~1971)のバレエ<火の鳥>1910-19を観劇、その火の鳥の妖艶で神秘的な姿に刺激を受け、1967彼のライフワークとなる漫画<火の鳥>を制作する。時間と空間を超越した永遠の命を持つ不死鳥。「王子が神秘的な火の鳥の命を救い、羽の力をかりて、魔王から愛する美しい王女ツァレヴナを救出して彼女と結ばれる」
その血を飲めば飲んだ人間も不老不死の存在になる「火の鳥」黎明編で、火の鳥を狩りにきた若者・ウラジは、弓矢の効かない火の鳥を素手で捕まえようとしてその火に焼かれて死んでしまう。黎明編では、その後、火の鳥に魅入られた人間が何人も命を落としていく。不死の命を求める人間たちはそれを追い求める過程で死んでいく。一方、懸命に生きていこうとする人間を火の鳥は見守り、時に話しかけ、時に道案内として導く。対して、バレエ・リュスの火の鳥は、イワン王子の危機に王子が羽を翳した瞬間に約束通り現れ、王子と王子が恋に落ちた王女ツァレヴナを結びつけるために尽力する。
「ぼくはある劇場で、ストラヴィンスキーの有名なバレエ「火の鳥」を観ました。バレエそのものももちろんでしたが、なかでプリマバレリーナとして踊りまくる火の鳥の精の魅力にすっかりまいってしまいました。火の鳥の精は、悪魔にとらえられた王女を救うために、出発する王子の案内役をつとめる鳥で、ロシアの古い伝説なんだそうです。その情熱的で優雅で神秘的なこの鳥は、レオに匹敵するドラマの主人公として最適のように思えました。そういえば、どの国にも、火の鳥のような不思議な鳥の存在が伝説としてのこっています。蓬莱山伝説にあらわれるホーオーという鳥、あるいは不死鳥とよばれている一連のいいつたえなどに、なにか超自然的な生命力の象徴を鳥の姿に託したような感じがします。」
講談社『手塚治虫文庫全集 火の鳥②』p288より(初出:1968年12月20日発行「火の鳥 未来編」掲載)
ストラヴィンスキー作曲バレエ組曲<火の鳥>(1919年版)
「夜、イワン王子は火の鳥を捕えるため、魔王カスチェイの魔法の庭にやってくる。黄金の林檎の木の近くに火の鳥がいて、王子は火の鳥を捕えることに成功するが、火の鳥は「魔法の羽」を1枚渡すので、逃がしてほしいと懇願する。王子は納得し、魔法の羽を受け取り、火の鳥を逃す。その後、カスチェイに囚われた13人の乙女たちが庭にあらわれ、王子はひときわ美しい王女ツァレヴナと恋に落ちる。夜明けと共に魔王とその手下達があらわれ、王子を石に変えようとするが、王子が魔法の羽をふりかざすと、火の鳥が再びあらわれる。火の鳥は、不思議な力を使ってカスチェイたちに狂気的な踊りを強要し、眠りにつかせたうえ、魔王の弱点も教える。火の鳥の助けによってイワン王子はカスチェイを打倒することに成功し、石に変えられていた人々も生還する。最後は晴れて王子と王女は結ばれる。」
出典は、ロシア民話「イワン王子と火の鳥と灰色狼」、「ひとりでに鳴るグーズリ」。
■手塚治虫「火の鳥」
「火の鳥」は、漫画界の巨匠・手塚治虫が1967年から1988年まで描き続けたライフワークとも言える壮大な物語です。「生と死」をテーマに、古代から未来まで時代を超えて描かれた作品で、手塚治虫自身が「生と死の問題をテーマにしたドラマ、古代から未来へ延々と続く『火の鳥』という永遠の命との闘いは人類にとって宿命のようなものなのだ」と語っていたと言われています。
――
手塚治虫の作品、何が最も感動的か。
『火の鳥』『鉄腕アトム』『ジャングル大帝』『リボンの騎士』『ブラック・ジャック』『ネオ・ファウスト』『IL』『百物語』『手塚治虫 怪奇短編集』
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3、『火の鳥』のエピソード
■主なエピソードとしては、以下のような時代を舞台にした物語がある。
黎明編(3世紀頃の日本)
ヤマト編(4世紀頃)
太陽編(西暦663年〜672年、2001年〜2008年)
鳳凰編(〜752年)
羽衣編(西暦940年頃)
宇宙編(未来)
未来編(核戦争後の未来)
復活編(未来の医療技術がテーマ)
異形編
望郷編
乱世編
生命編
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手塚治虫『火の鳥』・・・火の鳥の血と不死、永遠の孤独、不滅の愛
http://mediterranean.cocolog-nifty.com/blog/2025/05/post-eafad1.html
■参考文献
手塚治虫オフィシャル
★火の鳥シリーズ 1954 – 1988 https://tezukaosamu.net/jp/manga/656.html
火の鳥 シリーズ 1954 – 1988
火の鳥(エジプト、ギリシャ、ローマ編)https://tezukaosamu.net/jp/manga/390.html
火の鳥NHK 黎明編 復活編 異形編 太陽編 未来編 
https://tezukaosamu.net/jp/anime/147.html
1947年製作のソ連時代のアニメーション映画『せむしの仔馬』に登場する火の鳥がヒントになっています。ロシアの民話の火の鳥の羽根は災いを招くそうですが、手塚治虫の描く火の鳥は永遠の生命の象徴であり、その羽根もたとえば撫でるだけで傷が回復したり、病気が治ったりという超能力を持っています。
火の鳥 https://tezukaosamu.net/jp/character/602.html
1954年火の鳥黎明編(漫画少年版)、1956年火の鳥エジプト編、1956年火の鳥ギリシャ編、1957年火の鳥ローマ編
1967年火の鳥黎明編、1967年火の鳥未来編、1968年火の鳥ヤマト編、1969年火の鳥宇宙編、1969年火の鳥鳳凰編、1970年火の鳥復活編、1971年火の鳥羽衣編、1971年火の鳥望郷編(COM版)、1973年火の鳥乱世編(COM版)、1976年火の鳥望郷編、1978年火の鳥乱世編、1980年火の鳥生命編、1981年火の鳥異形編、1986年火の鳥太陽編
――
戦国時代、切腹寸前の身を悪魔の娘スダマに魂を売ることで救われた武士一塁半里は、その契約により美男子不破臼人に変身。みちのくの地で富と権力を手中に収めるが…。ゲーテの古典『ファウスト』の二度目のマンガ化。
『ネオ・ファウスト』1988  https://tezukaosamu.net/jp/manga/339.html
手塚治虫による「ファウスト」の3度目のマンガ化です。
1970年2月、東京にほど近いN市のNG大学で、50年間研究に打ち込んできた一ノ関教授は、いまだに宇宙の真理が究明できないことに絶望し、自殺しようとしていました。
そこへ魔女メフィストが現われ、新しい生命と新しい人生を与えてほしいという一ノ関教授の願いを聞きいれます。
そして教授とメフィストは、教授がすべてのことに満足して「時よとまれ、お前は美しい」といった時、悪魔に魂をゆずるという契約をします。
メフィストは教授を、時間をさかのぼって1958年の過去へつれていき、若返り薬をのませます。美しい青年に若返った教授は、記憶を失い、坂根物産社長・坂根第造にひろわれ、第一と名づけられます。
『ブラック・ジャック』1973/11/19-1983/10/14 
【不屈の画狂老人卍】74歳にして画狂老人卍『鳳凰図屏風』(1835)、88歳『弘法大師修法図』、89歳『八方睨み鳳凰図』(1848)、90歳『富士越龍図』(1849)。90歳にして「天我をして五年の命を保たしめば、真正の画工となるを得べし」
画狂老人卍『鳳凰図屏風』
「筆魂 線の引力・色の魔力─又兵衛から北斎・国芳まで─」・・・画狂老人卍『鳳凰図屏風』の思い出
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アニメ化された「火の鳥」作品
「火の鳥」は複数の形態でアニメ化されてきました。主な作品は以下の通りです。
劇場版「火の鳥2772・愛のコスモゾーン」(1980年)- 手塚治虫自身が総監督を務めた作品
劇場版「火の鳥・鳳凰編」(1986年)- りんたろう監督によるアニメ映画
OVAアニメ「火の鳥 宇宙編・ヤマト編」(1987年)- 川尻善昭監督による作品
TVアニメ「火の鳥」(2004年)- NHKで放送された「黎明編・復活編・異形編・太陽編・未来編」全13話
「火の鳥 エデンの宙」「火の鳥 エデンの花」(近年)- 「望郷編」をベースにした配信アニメと劇場版
これらのアニメ作品は、原作漫画の壮大なスケールと深いテーマ性をどう映像化するかという挑戦と向き合ってきた。
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★★★★★
手塚治虫のマンガ『火の鳥』を読み解く初の大型展覧会「手塚治虫『火の鳥』展 -火の鳥は、エントロピー増大と抗う動的平衡=宇宙生命の象徴-」が、六本木ヒルズ・東京シティビューで開催される。会期は2025年3月7日~5月25日。
『鉄腕アトム』『ジャングル大帝』『リボンの騎士』『ブラック・ジャック』など数々の名作マンガを手がけたほか、アニメ界にも大きな業績を残した日本を代表するマンガ家・手塚治虫。手塚自らライフワークと称した『火の鳥』は、その血を飲んだ者は永遠の命を得るという伝説の鳥“火の鳥”を追い求める人々の葛藤を描く一大長編作品だ。1950年代から連載が開始され、手塚が晩年まで取り組んだ。過去と未来を交互に描き、「生と死」「輪廻転生」といった哲学的なテーマを表現した壮大な世界観は、現在まで多くの読者を魅了している。

30年以上にわたって執筆されたこの叙事詩に迫る本展は、企画・監修を生物学者の福岡伸一が担当。連載開始から70年が経過したいま、福岡を案内人として、新たな生命論の視点から『火の鳥』の物語構造を読み解き、手塚が表現し続けた「生命とはなにか」という問いの答えを探求するという。赤と黒を基調とした展覧会キーヴィジュアルは、グラフィックデザイナーの佐藤卓が手がけた。
――
手塚治虫のライフワーク『火の鳥』。テーマは「生きること、死ぬことの意味は何か」。人間にとって最も深遠な問いです。全編にわたって不死鳥“火の鳥”が登場し、生に執着する人間を翻弄しながら物語を動かします。そこでは、あらゆる生命が常に姿と形を変えながら、連綿と受け継がれていく輪廻転生の生命観、汎神論的な世界観が示されます。これは、生命が絶えず自らの破壊と創造を繰り返しながら、エントロピー増大の法則に抗い続けている「動的平衡」であるとする私の生命論とぴたりと重なります。
本展の狙いは、動的平衡の視点から火の鳥の意味を読み解くことにあります。そして、手塚治虫が描くことを約束しながら果せなかった物語の結末を想像してみたいと思います。ぜひご期待ください。(福岡伸一のコメント)
「手塚治虫『火の鳥』展 -火の鳥は、エントロピー増大と抗う動的平衡=宇宙生命の象徴-」
六本木ヒルズ 東京シティビュー(エリア:六本木、乃木坂)
2025年3月7日(金)〜2025年5月25日(日)

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