「大英博物館 北斎─国内の肉筆画の名品とともに─」・・・北斎、最後の旅
大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』278回
【葛飾北斎、苦節五十年】北斎は、20歳で絵師となるが売れず、苦節50年、72歳『富岳三十六景』『神奈川沖浪裏』(1831)まで苦境。北斎は、九十歳で死ぬまで絵を描きつづける。
【葛飾北斎、七変化】葛飾北斎(1760-1849)の最初期、勝川派の絵師として活動した春朗期(20~35歳頃)、勝川派を離れて浮世絵画派とは一線を画した作画活動を行った宗理期(36~44歳頃)、読本の挿絵に傾注した葛飾北斎期(46~50歳頃)、多彩な絵手本を手掛けた戴斗期(51~60歳頃)、錦絵の揃物を多く制作した為一期(61~74歳頃)、自由な発想と表現による肉筆画に専念した画狂老人卍期(75~90歳)
【源為朝の冒険、曲亭馬琴との共作】弓の名人、腕の腱を切られても弓を引く。「為朝図」は北斎が「戴斗」という画号を名乗っていた50代の時の作品。曲亭馬琴の小説「椿説弓張月」の完成1811年、全5編29冊を祝って描かれた肉筆画、金の切箔がまかれる豪華な作品。
【椿説弓張月、源為朝、保元の乱】少納言入道信西との不和で九州へ追われた源為朝は、八町礫紀平治を家来にし、白縫姫を妻として九州を平定したが、保元の乱に敗れて伊豆大島に流される。そこでも為朝は善政を敷いたが、官軍に攻め寄せられ、鬼夜叉を身代り死にさせて、九州を経て琉球に漂着した。琉球では、尚寧王の暗愚に乗じて妖術使い濛雲が実権を奪い、奸臣利勇と対決していたが、為朝は世継ぎの王女を助けて、孤島に漂着していたわが子舜天丸や紀平治とともに濛雲を破り、琉球を平定した。舜天丸は王位につくが、為朝は昇天する。
【89歳、小布施にて『怒涛図』男浪・女浪、『八方睨み鳳凰図』(1848)】北斎が波を主題に描き始めたのは40代の頃。何十年もかけてあらゆる波を描いた。70代でたどり着いた『神奈川沖浪裏』の大波。冨嶽三十六景は大成功したが、北斎は満足せず。15年後、祭屋台の天井絵として怒濤図を描いた。なぜ小布施で怒濤図を描いたのか。天保の改革で贅沢が禁止され、浮世絵も弾圧された。小布施の豪商・高井鴻山が後ろ盾となり、工房を提供した。北斎は小布施を拠点に内面を表現する肉筆画を描く。岩松院にある八方睨み鳳凰図も北斎最晩年の大作。
【不老不死、不死身の象徴】74歳にして画狂老人卍『鳳凰図屏風』(1835)。ボストン美術館肉筆浮世絵、江戸の誘惑(2006)
【不屈の画狂老人卍】74歳にして画狂老人卍『鳳凰図屏風』(1835)、88歳『弘法大師修法図』、89歳『八方睨み鳳凰図』(1848)、90歳『富士越龍図』(1849)。90歳にして「天我をして五年の命を保たしめば、真正の画工となるを得べし」「画工北斎は畸人なり。年九十にして居を移すこと九十三所。」飯島虚心『葛飾北斎伝』。
*大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
大久保正雄『永遠を旅する哲学者 イデアへの旅』
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展示作品の一部
葛飾北斎《冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏》横大判錦絵 江戸時代 天保元-4年(1830-33)頃 大英博物館蔵2008,3008.1.JA The Trustees of the British Museum
葛飾北斎《諸国瀧廻り 和州吉野義経馬洗滝》大判錦絵 江戸時代 天保4年(1833)頃 大英博物館蔵1937,0710,0.195 The Trustees of the British Museu
葛飾北斎《冨嶽三十六景 凱風快晴》横大判錦絵 江戸時代 天保元-4年(1830-33)頃 大英博物館蔵1906,1220,0.525 The Trustees of the British Museum
肉筆浮世絵
葛飾北斎《弘法大師修法図》一幅 江戸時代 弘化年間(1844-47年) 西新井大師總持寺蔵
葛飾北斎《為朝図》一幅 江戸時代 文化8年(1811) 大英博物館蔵 1881,1210,0.1747 The Trustees of the British Museum
葛飾北斎《流水に鴨図》一幅 江戸時代 弘化4年(1847) 大英博物館蔵 1913,0501,0.320 The Trustees of the British Museum
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参考文献
「大浮世絵展―歌麿、写楽、北斎、広重、国芳 夢の競演」江戸東京博物館・・・謎の絵師写楽、画狂老人卍
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「大浮世絵展」・・・反骨の絵師、歌麿。不朽の名作『名所江戸百景』、奇想の絵師
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「新・北斎展」森アーツセンターギャラリー・・・悪霊調伏する空海、『弘法大師修法図』
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「大英博物館 北斎─国内の肉筆画の名品とともに─」・・・北斎、最後の旅
https://bit.ly/3rGjzkF
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江戸時代後期を代表する浮世絵師・葛飾北斎(1760~1849)は、世界で最も著名な日本の芸術家の一人です。《冨嶽三十六景》や『北斎漫画』など、一度見たら忘れられないインパクトを持つ作品の数々は、国内外で高い人気を誇っています。
北斎と海外との関係については、モネ、ドガ、ゴッホら印象派およびポスト印象派の画家たちによる北斎への傾倒や、フランスを中心としたジャポニスムへの影響が有名ですが、イギリスにも多くのコレクターや研究者がおり、その愛好の歴史は19世紀まで遡ることができます。なかでも大英博物館には、複数のコレクターから入手した北斎の優品が多数収蔵されており、そのコレクションの質は世界でもトップクラスです。本展では、この大英博物館が所蔵する北斎作品を中心に、国内の肉筆画の名品とともに、北斎の画業の変遷を追います。約70年におよぶ北斎の作画活動のなかでも、とくに還暦を迎えた60歳から、90歳で亡くなるまでの30年間に焦点を当て、数多くの代表作が生み出されていく様子をご紹介します。また、大英博物館に北斎作品を納めたコレクターたちにも注目し、彼らの日本美術愛好の様相を浮き彫りにします。
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「大英博物館 北斎─国内の肉筆画の名品とともに─」サントリー美術館にて、2022年4月16日(土)から6月12日(日)まで
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