古代の偉大な思想家、エンペドクレス・・・古代ギリシアの理想、知恵、勇気、節制、正義、はなぜ失われたのか
大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』第252回
【理念を追求する精神】理念を探求する人は、邪知暴虐な権力と戦い、この世の闇の彼方に理想と美を求める。輝く天の仕事を成し遂げる。
古代ギリシアの理想はなぜ失われたのか。古代ギリシアの徳、知恵、勇気、節制、正義はなぜ失われたのか。
【古代の偉大な思想家、エンペドクレス】古代の哲学者、医者、詩人、政治家。アクラガス出身。ピタゴラス学派に学びパルメニデスの教えを受けた。自由精神を重んじ、権力に屈しなかった。金冠を頭に戴き、紫色の衣に金のベルトを巻いて、デルポイの花冠を携えて諸都市を巡り歩いた。紀元前430年死す。
エンペドクレスは、パルメニデスの存在論とヘラクレイトスの生成消滅論を融合した。万物の四つの根(リゾーマタ)、4つの元素、火、水、空気、土、4つの根の愛と憎による離合集散から宇宙は生成消滅する。愛の伸長期、消滅期、憎の伸長期、消滅期によって生成消滅する。宇宙円環と魂の円環が調和する。詩篇「自然について」と「カタルモイ」を書いた。地上に堕落したダイモーンが、神々のアイテールに帰還するドラマである。
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【理念を追求する精神】理念を探求する人、邪知暴虐な権力と戦い、この世の闇の彼方に理想と美を求める。輝く天の仕事を成し遂げる。空海、孔子、織田信長、李白、プラトン。即身成仏、仁義礼智信、武の七徳、桃花流水杳然去、美の海の彼方の美のイデア、存在の彼方の善のイデア。
理念を探求する精神は、邪知暴虐と対峙し、悪鬼と戦う。価値あることを為すには、犠牲と苦労と忍耐が必要である。
【理念を追求する精神】空海は理念を探求して旅した。空海の24歳の苦悩は『聾瞽指帰』に刻まれている。空海、ロレンツォ・デ・メディチ、プラトン、玄奘三蔵、李白、王羲之、嵯峨天皇、ソクラテス、理念に向かって、旅した人。理念を追求する人は、この世の闇の彼方に美を求める。
「人間の真の姿がたち現れるのは、運命に敢然と立ち向かう時である」シェイクスピア『トロイラスとクレシダ』
*大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
大久保正雄『永遠を旅する哲学者 イデアへの旅』
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【アグリジェント、神殿の谷】コンコルディア神殿が聳える。最も完璧な神殿。古代ギリシアの詩人ピンダロスが「人の造りし最も美しき都市」と謳った都市。神殿の谷は、稜線に20の神殿が聳える。丘に神殿遺跡がそこここに残る古代都市遺産群を廻る、広大な地。憧れの古代都市。哲学者エンペドクレスが、生まれた地。
アクラガスは、ギリシア人の植民都市、前 580年頃ゲラの市民によって建設され、前6~5世紀僭主ファラリスやテロンのもとに繁栄した、アクロポリスの丘の上のアルカイック期神殿群の遺跡はこの時期に属し、180年栄えた。紀元前406年、カルタゴに滅ぼされた。カルタゴ軍が、シケリア西部のカルタゴ殖民都市に対する攻撃の報復として、【アクラガス包囲】ドーリア人都市であるアクラガス(アグリジェント)を包囲した。
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【時間論】3つの世界観の時間論。時間には、回帰的時間と終末観的時間と進化的時間がある。(渡辺慧『時』第3章、時間の起源と機能)(回帰的時間は、エンペドクレス、ニーチェ『ツァラトゥストラ』。終末観的時間はキリスト教。進化的時間は、ベルクソン『創造的進化』)1974、初刊1948年。*エンペドクレスの宇宙円環(Cosmic Cycle)、ヘラクレイトスの回帰的宇宙、ニーチェの永劫回帰(Ewig Wiederkehren)、ピュタゴラスの輪廻転生。
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【トロイ戦争】『キュプリア』によれば,ガイアは、増えすぎた人間の重みに耐えかね、しかも人間には神 を畏敬する心がまったくなかったため, ゼウスにこの重荷.を軽減してくれるようにと願い出た。ゼウスは同情してまずテーバイ戦争を起こし多数の人間を滅ぼした。
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【哲人王、国家の姿】魂の徳を探求しなければならない。知恵、勇気、節制、正義。魂の3部分の調和。魂の徳を備える人間。知恵を探求する者、善のイデアを観るもののみが王にならねばならない。『国家』
【古代ギリシアの理想はなぜ失われたのか】古代ギリシアの徳、知恵、勇気、節制、正義はなぜ失われたのか。
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★参考文献
鈴木幹也『エンペドクレス研究』1985
フリードリヒ・ニーチェ『プラトン対話編研究序説』
旅する思想家、孔子、王羲之、空海・・・『戦う知識人の精神史』
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「旅する哲学者 美への旅」第69回 空海の旅 旅する思想家
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★★
神殿の谷、コンコルディア神殿
Dolce&Gabbana Alta Moda, Valley of the Temples, July 2019
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