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2016年8月 3日 (水)

新古今歌人、乱世に咲く花 美への旅 

Kouetsu_02jpg_2Kouetsu_03大久保正雄「旅する哲学者 美への旅」第70回 新古今歌人
新古今歌人、美への旅 乱世に咲く花

『新古今和歌集』 乱世に咲く花
新古今和歌集の時代は、源平の争乱、壇ノ浦の戦い(1185)平家滅亡から、源実朝の死による源氏滅亡(1219)、承久の変(1221)まで、価値観が崩壊する時代、乱世である。
新古今和歌集の美的理念は、象徴による観念の形象化、観念と感覚的形象の照応、余情美、妖艶、絵画的空間性、幻想、寂寥、有心、幽玄。
藤原俊成は幽玄美の世界を作り『千載和歌集』(1188)を選進、新古今歌人を養成した。
藤原定家は、幽玄美の世界から、さらに奥を究め、妖艶美を追求した。
藤原定家は、世上乱逆追討に背を向け、官途不遇の嘆きを超え、名歌を生みだす。
定家は、『新古今和歌集』(1205)選者となる。『新古今和歌集』竟宴には欠席した。
俊成が育てた新古今歌人は、幻想的で、余情漂う妖艶な美の世界を構築した。
*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
*大久保正雄『永遠を旅する哲学者 美のイデアへの旅』

■琳派の絵巻 『鹿下絵新古今和歌巻』
17世紀、琳派の創始者、本阿弥光悦、俵屋宗達による『鹿下絵新古今和歌巻』があり、現在は断簡として残っている。書:本阿弥光悦筆 画:俵屋宗達筆。
華麗なる絵巻に、28首の和歌が散らし書きされている。鹿の主題のみが、展開される美しい世界である。
本阿弥光悦、俵屋宗達『鶴図下絵三十六歌和歌巻』『三十六歌仙絵巻』とともに、傑作絵巻である。

■悲恋の花
藤原定家と式子内親王の間には悲恋があったと想像される。西行と後白河法皇の愛妾、待賢門院璋子は禁断の愛あがったと記録される。
式子内親王の歌「玉の緒よ 絶えなば絶えね ながらへば忍ぶることの弱りもぞする」(新古今1034)
私の命よ絶えるなら絶えてしまえ。このまま生きながらえれば、心に秘めた恋が表に現れてしまいそうだから。
生涯独身で過ごした式子内親王。忍ぶ愛の相手は、藤原定家であるかもしれない。
北面武士の佐藤義清は、23歳のとき、宮廷を辞め、出家した。
願はくは花の下にて春死なむその如月の望月のころ(続古今1527)
この歌には、秘められた恋の記憶が籠められているのか。

■新古今歌人 秀歌
藤原定家
大空は梅の匂いに霞みつつ曇りも果てぬ春の夜の月 新古今和歌集春上40
春の夜のゆめのうき橋とだえして峰にわかるる横雲のそら(新古今38)
梅の花にほひをうつす袖のうへに軒もる月のかげぞあらそふ(新古今44)春上
くりかへし春のいとゆふいく世へておなじみどりの空にみゆらん
花の香のかすめる月にあくがれて夢もさだかに見えぬ頃かな 藤原定家
うつり香の身にしむばかり契るとて扇の風の行へたづねば 藤原定家
さゆりばのしられぬ恋もあるものを身よりあまりてゆく蛍かな
かきやりしその黒髪のすぢごとにうち臥すほどは面影ぞたつ(新古今1390)
白妙の露の袖れに露おちて身にしむ色の秋風ぞ吹く 新古今 恋 一三三六
玉響(たまゆら)の露も涙もとどまらず亡き人恋ふる宿の秋風(新古今788)哀傷歌。
 *一一九三年7月二日亡母を偲び詠歌。二月十三日定家母没。
駒とめて 袖うちはらふ陰もなし 佐野のわたりの雪の夕暮れ (新古今671)

藤原俊成女
風かよふねざめの袖の花の香にかをる枕の春の夜の夢(新古今112)千五百番歌合
梅の花あかぬ色香もむかしにておなじかたみの春の夜の月(新古今47)千五百番歌合
恨みずやうき世を花のいとひつつ誘ふ風あらばと思ひけるをば(新古今40)
月影もうつろふ花にかはる色の夕べを春もみよしの山(俊成卿女集補遺)
ながむれば我が身ひとつのあらぬ世に昔に似たる春の夜の月(続後撰146)
橘のにほふあたりのうたたねは夢もむかしの袖の香ぞする(新古今245)
 本歌*五月待つ花橘の香をかげば昔の人の袖の香ぞする 詠み人しらず 古今和歌集

式子内親王
「玉の緒よ 絶えなば絶えね ながらへば忍ぶることの弱りもぞする」(新古今 恋一1034)
私の命よ絶えるなら絶えてしまえ。このまま生きながらえれば、心に秘めた恋が表に現れてしまいそうだから。

藤原俊成
またや見む交野の御野の桜がり花の雪ちる春の曙(新古今114)
石ばしる水の白玉数見えて清滝川にすめる月影(千載284)

■新古今歌人年代記
『千載和歌集』『新古今和歌集』の時代は、後白河上皇、後鳥羽上皇の時代である。
■【後白河上皇】院政1158—1179
平氏と対抗。平氏滅亡を目指す。1185年、壇ノ浦の戦い、平家滅亡。
★1183、第七の勅撰和歌集『千載和歌集』撰進、1188年、完成。
後白河上皇は、源平の合戦の裏表で暗躍し、★源頼朝に「日本一の大天狗」と言わせた。権謀術数に長けた人。若い世代の武士勢力である源義朝や平清盛を味方につけ、崇徳上皇のクーデター(保元の乱)を粉砕。源頼朝に平氏を打倒させる。
■【後鳥羽上皇】院政1198—1221
★1201和歌所を設置。
★1205『新古今和歌集』竟宴。第八の勅撰和歌集。以後も切り継ぎ。「隠岐本」。
九条兼実らの親幕派と対抗。幕府討伐を目指す。1221年、承久の乱、挙兵して敗北。隠岐に配流される。

■藤原俊成1141—1204
★寿永二年(1183)、後白河院の下命により七番目の勅撰和歌集『千載和歌集』の撰進に着手し、息子定家の助力も得て、文治四年(1188)に完成。
★建久四年(1193)、『六百番歌合』判者。
文治八年(1192)、式子内親王の下命に応じ、歌論書『古来風躰抄』を献ずる。この頃歌壇は後鳥羽院の仙洞に中心を移すが、俊成は後鳥羽院からも厚遇される。
★建仁元年(1201)には『千五百番歌合』判者。
1204、『新古今和歌集』完成を見ずに、亡くなる。63歳。

■藤原定家1162—1241
応保二年(1162)、藤原俊成(顕広)四十九歳の時の子として生れる。母は藤原親忠女(美福門院加賀)。同母兄に成家、姉に八条院三条(俊成卿女の生母)。
★元年(1181)、二十歳の時、「初学百首」を詠む。★1182年父に命じられて「堀河題百首」を詠み、両親は息子の歌才を確信して感涙。
★建仁元年(1201)、新古今和歌集の撰者に任命され、翌年には念願の左近衛権中将の官職を得た。
★1205 二月二十六日『新古今和歌集』竟宴。藤原定家、竟宴に出席せず。批判した。
承久二年(1220)、二月十三日内裏歌会に提出した歌*が後鳥羽院の逆鱗に触れ、勅勘を被って、公の出座・出詠を禁じられる。*「道のべの野原の柳したもえぬあはれ嘆きのけぶりくらべや」定家
★承久三年(1221)五月、承久の乱が勃発。後鳥羽院は隠岐に流され、定家は西園寺家・九条家の後援のもと、社会的・経済的な安定を得る。

■俊成卿女
生没年不詳:1171年(承安元年)頃 - 1251年(建長3年)
俊成の孫、養女。

■式子内親王
生年不詳*久安五~建仁一(1149~1201)
後白河天皇の第3皇女。加茂神社の斎院、のち出家。
「玉の緒よ 絶えなば絶えね ながらへば忍ぶることの弱りもぞする」(新古今1034)
私の命よ絶えるなら絶えてしまえ。このまま生きながらえれば、心に秘めた恋が表に現れてしまいそうだから。

■美福門院加賀(藤原親忠女)
生年未詳~建久四(1193)
藤原定家の母、藤原俊成の妻。
為経(寂超)の妻となり、康治元年(1142)、隆信を生む。為経が康治二年(1143)に出家した後、俊成と再婚し、久寿二年(1155)に成家を、応保二年(1162)に定家を生んだ。晩年出家。
たのめおかむたださばかりを契りにて憂き世の中を夢になしてよ(新古今1233)

■西行 元永元~建久元(1118~1190) 俗名:佐藤義清 法号:円位
『新古今和歌集』には最多の94首が入選している。
待賢門院璋子(1101~1145没44才)への叶わぬ恋(悲恋)がある。璋子は、皇后ながら自由奔放な恋愛をしていた。璋子は、鳥羽上皇の中宮にして白河法皇の愛妾。その身分の差は天と地ほど禁断の恋。璋子を恋慕い続けて数年がたち、北面武士の佐藤義清は23歳のとき出家した。
願はくは花の下にて春死なむその如月の望月のころ(続古今1527)

■寂蓮 生年未詳~建仁二(1202) 藤原定長 通称:少輔入道
おじ俊成の猶子となる。定家は従弟。建仁元年(1201)には和歌所寄人となり、新古今集の撰者に任命される。新古今完成前に没する。
さびしさはその色としもなかりけり槙立つ山の秋の夕暮(新古今361)
今はとてたのむの雁もうちわびぬ朧月夜の明けぼのの空(新古今58)
参考文献
千人百首 藤原俊成
http://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/sennin/syunzei2.html
千人百首 藤原定家
http://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/sennin/teika.html
★本阿弥光悦、俵屋宗達『新古今和歌巻』17世紀
★本阿弥光悦、俵屋宗達『鶴図下絵三十六歌和歌巻』17世紀
★本阿弥光悦、俵屋宗達『三十六歌仙絵巻』17世紀
★参考文献
久保田淳『新古今歌人の研究』1973
久保田淳『藤原定家全歌集』河出書房新社1986
久保田淳『新古今和歌集全評釈』講談社1976-77
久保田淳『藤原定家』集英社1984
塚本邦雄『定家百首 良夜爛漫』河出書房新社1973
塚本邦雄『新古今新考 断崖の美学』花耀社1981
塚本邦雄『藤原俊成 藤原良経』筑摩書房1975
藤平春男『歌論の研究』ぺりかん社1988
久松潜一『中世歌論集』岩波文庫1932
鈴木日出男『原色小倉百人一首』文英堂2003
大久保正雄『断崖の美学 新古今和歌集の美学』1997
大久保正雄『新古今和歌集の美学 闇の中に漂う香り』1997
大久保正雄2016年8月2日

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