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2016年8月11日 (木)

シェイクスピア、 『ハムレット』のディレンマ

OpheliajohneverettmillaisThomas_francis_dicksee_ophelia大久保正雄「旅する哲学者 美への旅」第78回シェイクスピアのディレンマ
シェイクスピア 『ハムレット』のディレンマ

人生は戦いであり、戦場である。人は、いかに正しくても、窮地に陥ることがある。二つの道のどちらを選ぶべきか、人は苦悩する。美徳なき時代、本質直観と論証を構築することによって、悪と戦わねばならない。階級社会と権力の暴力に反抗して。ソクラテスのように
*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
*大久保正雄『永遠を旅する哲学者 美のイデアへの旅』
ディレンマ(Dilemma両刀論法)、二律背反(Antinomie)、二つの道のどちらを選ぶべきか、人は苦悩する。難問、窮地(Aporia)に陥るとき、解決法を模索する。自己矛盾する主張には、パラドックス(Paradox)がある。有名なパラドックス(Paradox)には、ソクラテスのパラドックスがある。
【ソクラテスのパラドックス】は、ソクラテスの知をめぐるパラドックスである。プラトン『ソクラテスの弁明』『メノン』。
■シェイクスピア『ハムレット』のディレンマ
生きるべきか死ぬべきか。
戦いを避けて、生きようとするなら、臆病者という汚名の恐れがある。
闘って死のうとするなら、命を失う恐れがある。
ハムレットは、生を選ぶこともできず、死を選ぶこともできず、煩悶する。
シェイクスピア『ハムレット』1600
■シェイクスピア『ハムレット』
この前提には、ハムレット王暗殺事件がある。王暗殺に、王妃ガートルードが関与している可能性がある。劇中劇で、耳から毒殺されたことが判明する。
忍耐するべきか、復讐するべきか。ディレンマ(両刀論法)である。
「口先だけで愛すると言うなら、私も口先だけで愛すると言います。
本気で愛するというなら、私も本気で無視するといいます。」イモージェン、シェイクスピア『シンベリン』
ディレンマ(Dilemma両刀論法)は、2つの互いに対立しあう主張が、同時に成り立つ。互いに矛盾することである。一方が成り立てば、他方が成り立たない。
トリレンマ(Trilemma)は、3つの互いに対立しあう主張が、同時に成り立つことである。
シェイクスピア『ハムレット』は、デンマーク王家、王宮エルシノア城で起きる事件である。

■エウリピデス『オレステス』のディレンマ
『ハムレット』は、ハムレット王暗殺をめぐり、ハムレットが、新しい王と王妃に復讐を遂げる復讐劇である。これは、古代ギリシア悲劇の同工異曲である。
『オレステス』は、アガメムノン王暗殺をめぐり、オレステスが、王妃クリュタイムネストラと愛人アイギストスに復讐を遂げる復讐劇である。
オレステスは、姉エレクトラと一緒に、王妃クリュタイムネストラを殺害し、その後、煩悶する。
『オレステイア』三部作は、ミュケナイ王家の悲劇、トロイア戦争後、紀元前1200年の復讐劇である。
【タンタロスの呪い、ペロプスの呪い】オレステスの5世代前の事件がある。
■手塚治虫『ガラスの地球を救え』ブラック・ジャックのディレンマ
ブラック・ジャックはどんな患者でも治してしまいますから、患者は寿命が延びます。先端医療機関は、どんどん患者を救って生命を延ばします。結果的に、世の中は死ぬ人間が少なくなり、高齢化社会に傾いて行くのではないか。ブラック・ジャックは、一人患者を治すごとに、いつも悩みに苦しむのです。
人間はただ命が助かって寿命が延びただけでは「生きている」とは言えません。老人にも「生きがい」がなければ生きる気力が湧いてこない。老人に対する社会の目はかなり冷たいものがある。若さでこの世を謳歌することや、仕事に没頭することですっかり忘れている。
★ディレンマ1
高層ビル建設のために、一本のケヤキの木が伐り倒されることになる。ある老人が建設を食い止めようとするが果たせず、切り倒される最後の日、欅といっしょに酒盛りした後、その枝で首つり自殺を図る。ブラック・ジャックは、手術して助けるが、問題を抱える。老人は生きのびたが、老人にはもはや生きがいがない。
★ディレンマ2
ある老人は、腕のいい大工で、ブラック・ジャックの手術室と病室を増築することに執念を燃やす。だが中途で病に倒れる。彼は白血病で、広島で原爆にやられていた。ブラック・ジャックはその老人を前にしながら、原爆という巨大な敵をねじ伏せることができなかった。ブラック・ジャックは、医療とは何か、人間の幸福とは何か、問いを繰り返す。
「いのちはあるが、生きがいがない」「生きがいはあるが、いのちがない」ここに、ディレンマがある。
窮極のディレンマ、「生命と生きる価値」のディレンマである、と私は考える。
■加藤尚武「生命倫理学と環境倫理学の対立」ディレンマ
生命倫理学(Bioethics)と生命倫理学(Bioethics)は、ディレンマの関係にある。
ディレンマ(Dilemma)は、2つの互いに対立しあう主張が、同時に成り立つ。互いに矛盾する。一方が成り立てば、他方が成り立たない。
生命倫理学(Bioethics)は、自己決定をよりどころに展開される。環境倫理学(EmbiolonmentalEthics)は、人類の生存可能が重要な原理である。生命倫理学は個人の自己決定が原理であり、環境倫理学は全体の生存可能が原理である。
環境倫理学の基本テーゼ
1、自然物も最適の生存への権利をもつ。2、未来世代の生存権と幸福に責任をもつ。世代間倫理。3、決定の基本単位は、生態系そのもの。地球全体主義。
生命倫理学の基本テーゼ
1、生命倫理学の基本概念である生命の質は、痛いか、痛くないかという現在の感覚が価値判断の原点。2、生命倫理学は、生存権を人格に限定する。3、生命倫理学と環境倫理学の対立は、個人と全体の対立である。
★参考文献 加藤尚武『環境倫理学のすすめ』「生命倫理学と環境倫理学の対立」1991
生命倫理学(Bioethics)は、「医療や生命科学に関する倫理的・社会的・哲学的・法的問題やそれに関する問題をめぐり研究する学問」と定義されている。アメリカでの、医療における患者の人権問題が発端とされている。
加藤尚武(1937~)によると、バイオエシックスは、「自分のものは自分で決めていい」という個人主義を徹底し、相対主義の価値観に立脚して人間と人間の関係について考える学問であるとする。このため、生命倫理学と環境倫理学は本質的に対立するという。
加藤尚武は、生命倫理学と環境倫理学(EmbiolonmentalEthics)の関係をつぎのように説明する。個人主義を徹底する生命倫理学に対して環境倫理学では、地球での人間の生存を可能な状態にすることをもっとも大切な原理とし、個人の生存より生態系の存続を優先する傾向を持つとする。例えば、環境倫理学者は、人口増加を防ぐためは中絶を強制することもやむをえないと判断する。一方、生命倫理学者は、個人の自己決定権を侵害することは絶対に許されないとして、これを否定することになる。
■『ファウスト』のディレンマ
老学者ファウスト博士は、あらゆる学問を学んだが、人生の楽しみを手に入れていない。
ファウストは、悪魔と契約して魂を売りわたすかわりに、地上の快楽を手に入れる。
手塚治虫『ネオ・ファウスト』『百物語』は、ファウストのディレンマを尖鋭化してイメージ化する。若く才能がある貧しい青年と老いた金持ちのディレンマ。
「いのちはあるが、生きがいがない」「生きがいはあるが、いのちがない」ここに、ディレンマがある。窮極のディレンマ、「生命と生きる価値」のディレンマである。
この窮極には、ソクラテスの思想がある。「人はただ生きるだけではなく、よく生きること、美しく生きることが、大切である」。
■世界観の対立
倫理学の歴史は、世界観の対立の歴史である。
プラトン、アリストテレスの価値論倫理学、目的論倫理学とカントの規範倫理学、義務論倫理学との戦いである(cf.黒田亘『行為と規範』)。
だが、近代において、倫理学は堕落した。価値論倫理学は、功利主義倫理学に堕落し、規範倫理学、義務論倫理学は、階級主義倫理学に堕落した。現代は、美徳なき時代、悲劇なき時代、『いかさま師』の時代である。美徳なき時代、いかに理想と価値を再構築するか。
大久保正雄
―――――
旅する哲学者、ソクラテスの戦い ソクラテスの祈り
https://t.co/gW05rsb44i
ソクラテスは、論理の達人に止まらず、夢と瞑想とダイモーン(守護霊)の声を聴く人。
大久保正雄『地中海紀行』第44回ソクラテスの祈り
哲学者の魂 ソクラテスの死
https://t.co/K1EiSrdg79
大久保正雄『地中海紀行』第43回哲学者の魂 ソクラテスの死1

★Thomas Francis Dicksee, Ophelia,1864
★Shakespeare, Hamlet, Elsinore Castle,Cronborg Castle
★Goethe, Faust
★参考文献
加藤尚武『環境倫理学のすすめ』1991
加藤尚武「生命倫理学と環境倫理学の対立」
山内得立『ロゴスとレンマ』岩波書店
黒田亘『行為と規範』勁草書房1991
マーティン・コーエン『倫理問題101問』ちくま学芸文庫
マーティン・コーエン『哲学問題101問』ちくま学芸文庫
Cf.山下正男『論理的に考えること』岩波書店P34
小田島雄志『小田島雄志のシェイクスピア遊学』白水Uブックス1982
監修 福田恆存『シェイクスピア・ハンドブック』三省堂1987
池内紀訳ゲーテ『ファウスト』第一部、第一部、集英社文庫2004
手塚富雄訳ゲーテ『ファウスト』第一部、第一部、中公文庫
河合祥一郎訳『ハムレット』角川文庫
環境倫理用語集 http://www.eic.or.jp/ecoterm/?act=view&serial=3486
大久保正雄2016年8月10日

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