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2016年7月16日 (土)

デルフィ、オイディプス王の悲劇

Ingres_odipus_and_sphinx大久保正雄『地中海紀行』52回デルフィ、アポロンの聖域 2
デルフィ、アポロンの聖域 オイディプス王の悲劇

運命の三叉路、スフィンクスの謎を解くオイディプス、コリントスから来た使者、羊飼い。
王妃イオカステは、真相を覚り、宮殿で自ら命を絶つ。
オイディプスは、王妃の黄金のブローチで目を突き、盲目となり、放浪の旅に出る。
若い日にみた、パゾリーニ『アポロンの地獄』。古代の扉を開いた。

*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
*大久保正雄『永遠を旅する哲学者 美のイデアへの旅』

■オイディプス王 
Οἰδίπoυς τύραννoς
オイディプス王の伝説は、デルポイの神託から始まる。
テーバイ王ライオスは「自らの子によって殺される」という神託を受ける。我が子が誕生すると、ライオスは羊飼いに命じてみどり児をキタイロン山中に棄てさせる。しかし不憫に感じた羊飼いは人手に渡し、その子はコリントス王家で育てられ、王子オイディプスとして成長を遂げる。コリントス王妃ペリボイアに子がいなかったからである。
三叉路
成長したオイディプスは、コリントス王ポリュボスは実の父ではないという噂を聞き、眞偽を確かめるためにデルポイに赴く。アポロンの神託は彼の問いには応えず、「オイディプスは父を殺し、母と交わる」という預言を受ける。神託の成就を恐れたオイディプスは、コリントスには帰らぬと心に決め、パルナッソス山の麓の道を辿り、運命に導かれて自らは知らぬ生まれ故郷テーバイへと向かう。テーバイからデルフォイに神託を受けに行く途上にあるライオスと運命の三叉路で出会い、道争いの諍いが起き、その旅人を父とは知らず殺害する。
スピンクスの謎
ライオスはプラタイアイの王ダマシストラトスによって葬られ、王国はクレオンが継いだ。ヘラがスピンクスを送った。スピンクスは、女の面をし、鳥の翼をもつ獅子である。ムーサから謎を教わり、ピキオン山上に坐し、テーバイに謎をかけた。「一つの声をもち、四足、二足、三足になるものは何か。」スピンクスは、謎を解けぬ者たちを攫い食べた。クレオンは、「この謎を解いた者に王国とライオスの妻を与える」と布告した。
オイディプスは、スピンクスの謎を解いて、スピンクスは山から身を投じ、テーバイの国を困難から解放する。王なきテーバイの救済者なったオイディプスは新たな王となり、知らずに母イオカステを妻とする。歳月が流れ、テーバイを疫病が襲う。オイディプスに、嘆願の小枝を身につけた、老いた神官が、国を襲っている疫病からの救済を嘆願する場面から、ソポクレス『オイディプス王』は始まる。『オイディプス王』の悲劇は、以下のような物語である。
ライオス殺害の真相を追究
デルフォイの神託によって、「惡疫の原因は先王ライオス殺害の血の穢れにある」と知らされたオイディプスは、ライオス殺害の真相を追究する。老いた盲目の予言者テイレシアスを問いつめ「王が殺害者だ」と聞き、さらにテイレシアスを侮辱して「オイディプスが先王ライオスの子であり、父を殺して、父の妃を妻としている」という予言を聞くにいたる。
コリントスの使者
コリントスから来た使者が到着して、コリントス王ポリュボスの死を告げるが、オイディプスがポリュボスの実の子ではない、ライオス王に仕える羊飼いから譲り受けたことを、明らかにする。この時、王妃イオカステは、真相を覚り、宮殿で自ら命を絶つ。
呼ばれた羊飼いは、コリントスから来た使者に問いつめられて、真相を語り、自分がライオス王の子をコリントスの使者に渡したということを、認める。オイディプスは、王妃の黄金のブローチで目を突き、盲目となり、放浪の旅に出る。
■ペロプスの呪い
テーバイ伝説、ソポクレス『オイディプス王』は、テーバイ王ライオスが受けたデルポイの神託を前提として始まる。神託の内容は「妃と交わり子を成すなかれ、もし子をなすならば自らの子によって殺される」であり、生まれた子は、王によって踝に孔を開けられ両足を縛られ、キタイロンの山峡に捨てられた。ライオスの子は、牧人に拾われコリントス王ポリュボスの家で育てられる。王妃ペリボイアに子がいなかったためである。「腫れた足」を意味するオイディプスは、やがてデルポイの神託を成就することになる。
だが、それに遡り、ライオスがデルポイの神託を受ける原因は、ペロプスの呪いである。テーバイ王ライオスは、若い時、ペロプス王の宮廷に亡命していた。ペロプスの美しい王子クリュシッポスに、戦車を駆る術を教えている時に、恋し思いを遂げたため、王子は悩み自殺した。ペロプスは王子の死を悲しみ、ライオスを恨みライオスに呪いをかけた。ペロプスの呪いがテーバイ王家の惨劇の原因である。復讐の成就、呪いの実現により、悲劇が生まれる。
(cf.ソポクレス『オイディプス王』『コロノスのオイディプス』『アンティゴネ』、アポロドーロス『ビブリオテーケー』3-5-5,7,8)
■旅路の果て
ペロプスの呪いが、テーバイ王ライオスを呪縛し死に至らしめ、オイディプス王を苦しめ、王妃イオカステは自害、縊死する。オイディプス王は、王妃の黄金のブローチで目を突き、盲目となり、放浪の旅に出る。旅路の果てに、老いたるオイディプスは、娘アンティゴネに手を引かれてコロノスに辿り着き、エリニュエス(復讐の女神たち)の聖所で終焉を迎えようとする。オイディプスは、我が子、エテオクレスとポリュネイケスを呪って死ぬ。テーバイの王権をめぐって、エテオクレスとポリュネイケスとが争い、ポリュネイケスと七人の将軍たちはテーバイを攻撃し、兄弟は死ぬ。
呪いは愛する者の復讐から生まれる。復讐は正義を実現する方法であり、ギリシア悲劇は愛と復讐のドラマである。自らの身に覚えのない呪縛を受けた身でありながら、運命を見つめ、運命と対峙し、耐えて生きたオイディプス。旅路の果てに、オイディプスが見たものは何か。
「人間にとってはこの世に生まれないことが幸せである。生まれたら早く去ったほうが幸せである。」(ソポクレス『コロノスのオイディプス』)という言葉は有名である。だがそれにもかかわらず、苦しみの深さに耐え、死の時まで、美と正義と善を追求して生きる人間の精神の中に、死すべき人間の尊厳がある。
★Jean-Auguste Ingres,Oedipus,1808,Louvre スフィンクスの謎を解くオイディプス
★デルフィの町
★デルフィ考古学博物館の糸杉
★【参考文献】
トゥキュディデス久保正彰訳『戦史』岩波文庫1966-67
ヘロドトス松平千秋訳『歴史』岩波文庫1971-72
ヘシオドス廣河洋一訳『神統記』岩波文庫1984
カール・ケレーニイ高橋英夫訳『ギリシアの神話 神々の時代』中央公論社1974
カール・ケレーニイ高橋英夫・植田兼義訳『ギリシアの神話 英雄の時代』中央公論社1974
アポロドーロス高津春繁訳『ギリシア神話』岩波文庫1953
ホメロス沓掛良彦訳『ホメーロスの諸神讃歌』平凡社1990
松平千秋、久保正彰、岡道男編『ギリシア悲劇全集』13巻、岩波書店1990-1992
高津春繁編『アイスキュロス、ソフォクレス』「世界古典文学全集8」筑摩書房1964
松平千秋編『エウリピデス』「世界古典文学全集9」筑摩書房1965
村田潔編『ギリシア美術』体系世界の美術5、学研1980
村田数之助『ギリシア美術』新潮社1974
ウェルギリウス泉井久之助訳『アエネイス』岩波文庫1976
アイスキュロス『エウメニデス』
ソポクレス『オイディプス王』『コロノスのオイディプス』『アンティゴネ』
エウリピデス『ポイニッサイ』『イオーン』
大久保正雄Copyright 2002.10.02

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