エーゲ海年代記 文明の十字路、エーゲ海
大久保正雄『地中海紀行』第23回
エーゲ海年代記 文明の十字路、エーゲ海
窓を開けると、エーゲ海が見える。
烈しい光が射してくる。
夢のように過ぎた美しい日々。愛は過ぎ去りし日の眞夏の輝き。
黄金の黄昏が忍びよる。あなたと歩いた黄昏の海。
星が輝く夜、エーゲ海の思い出。
神々に祈り、カスタリアの泉を飲む者は、再びギリシアに歸って來る。
エーゲ海の魂に觸れた者は、再びエーゲ海に歸って來る。
*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
*大久保正雄『永遠を旅する哲学者 美のイデアへの旅』
■文明の十字路 エーゲ海
エーゲ海は、アイガイアの海であり、多島海(arkhipelagos)と呼ばれ、400餘りの島々が浮かぶ。キュクラデス諸島、ドデカニサ諸島、ロドス島、クレタ島などの島々からなる。エジプト文明とアナトリア文明とギリシア文明を結ぶ、海上の十字路である。
ティレニア海はイタリアの海であり、エーゲ海はギリシアの海である。
エーゲ海文明は、ヨーロッパ最古の文明であり、ギリシア文明の濫觴である。
■エーゲ海年代記
紀元前3000年、エーゲ海に、青銅器時代が始まる。
クレタ島における初期クレタ(ミノア)文化が始まる。初期キュクラデス文化榮える。 紀元前2300年、東ヨーロッパより北方民族がギリシア(原ギリシア人)に侵入、初期ヘラディック(ギリシア)文化を生む。
紀元前1900年、中期クレタ文化、旧宮殿時代、始まる。ファイストス宮殿の円盤、作られる。
紀元前1700年、クレタ旧宮殿崩壊する。クノッソス、ファイストス、マリア、旧宮殿崩壊。後期クレタ文化、新宮殿時代、始まる。クノッソス宮殿フレスコ画、蛇女神像、牡牛のリュトン、線文字A、作られる。
紀元前1600年、ミュケナイ(アカイア人)擡頭する。ミュケナイ文明ペロポンネソス半島に起こる。ミュケナイ圓形墳墓A、黄金のマスク、作られる。
紀元前1450年、クレタ新宮殿崩壊する。クノッソス、ファイストス、マリア、新宮殿崩壊。ミュケナイ人(アカイア人)、クレタ島に進出する。
紀元前1380年、クノッソス宮殿(ミュケナイ支配下)、最終的に崩壊する。クノッソスに線文字B(ギリシア文字)文書あらわれる。 紀元前14世紀、ミュケナイ王朝、最盛期に達する。
紀元前1200年以降、ミュケナイ王宮崩壊する。ドーリス人が北方より侵入する。ミュケナイ文明滅びる。ギリシア、暗黒時代に入る。
地中海東地域、文明が崩壊する。エジプト新王國、ヒッタイト帝國滅びる。原因は未解明である。
紀元前1100年、ギリシア、鉄器時代始まる。
紀元前1000年-900年頃、アイオリス人、イオニア人、ドーリス人が小アジア、エーゲ海の島々に植民活動を行う。イオニア人、デロス島にアポロンの母レトの祭儀を齎す。
紀元前900年、この頃暗黒時代終わる。ギリシア史の曙はじまる。
ポリス社会成立、貴族政時代はじまる。幾何学様式陶器、作られる。
紀元前9世紀、ドーリス人、ロドス島に植民。リンドス、イアリュソス、カミロスに3大都市を築く。
紀元前776年、第1回オリュンピア祭競技會はじまる。オリュンピア、ゼウス祭礼。
紀元前750年、この頃ホメロスの詩編『イリアス』成立。その半世紀後『オデュッセイア』成立。ギリシア人が地中海、黒海沿岸に植民都市を作り始める。大規模な植民活動を開始する。
紀元前700年、この頃ヘシオドス叙事詩『神統記』『仕事と日々』が作られる。
紀元前667年、メガラ人(ドーリス人)、ボスポラス海峡の岬にビュザンティオンを建設する。
紀元前546年、イオニア地方ミレトス、自然哲學者タレス、アナクシマンドロス死ぬ。
紀元前499年、イオニア諸都市ミレトスを中心に獨立を圖り、ペルシア帝國に反亂する。
紀元前494年、ペルシア帝國ダレイオス1世が、ミレトスを陥落、破壊する。ダレイオス1世、イオニア諸都市を征服。キオス、レスボス、テネドスを占領。
紀元前5世紀、ミレトスにミレトス人建築家ヒッポダモスが幾何学的形態の都市を建設。アテナイの港町ペイライエウス、トゥリオイに都市を設計。「ヒッポダモス、都市の幾何学的形態の創始者」(cf.アリストテレス『政治学』第2巻第8章)
紀元前408年、ロドス人、人工都市ロドスを建設する。三都市(リンドス、イアリュソス、カミロス)から、集住(シュノイキスモス)する。
■時を溯る旅
或る晩秋、私はイタリアを旅した。そして、フィレンツェ、イスタンブール、アテネへ、時を溯る旅を續けた。愛と復讐の大地ギリシア。地中海の光景ほど苦悩する魂を鎭める地はない。
2001年秋、私はギリシアを旅し、エーゲ海の島々へと飛行した。エーゲ海文明の源泉へ、ギリシア文化の濫觴へと溯る旅に出た。時の迷宮を溯る旅、知恵を愛する思想家の生きかたが生まれたエーゲ海への旅。
我が魂のオデュッセイアは、エーゲ海紀行へと旅立つ。
御手紙を頂いた人、励ましのことばを頂いた人、愛讀者のみなさま、有難うございました。心から感謝をささげます。
★参考文献
カール・ケレーニイ高橋英夫訳『ギリシアの神話 神々の時代』中央公論社1974
ヘシオドス廣河洋一訳『神統記』岩波文庫1984
中村善也、中務哲郎『ギリシア神話』岩波書店1981
ディオゲネス・ラエルティオス加来彰俊訳『ギリシア哲学者列伝』3巻、岩波文庫1984-1994
ジャン・シァルボノー岡谷公二訳『ギリシア・アルカイク美術』人類の美術1新潮社1972
ジャン・シァルボノー村田数之介訳『ギリシア・クラシック美術 前480-330』人類の美術3新潮社1973
周藤芳幸『図説ギリシア エーゲ海文明の歴史を訪ねて』河出書房新社1997
ジル・ラプージュ巌谷國士訳『ユートピアと文明 輝く都市・虚無の都市』紀伊国屋書店1988
大久保正雄『魂の美學 プラトンの対話編における美の探究』「上智大学哲学論集」第22号、上智大学1993
★リンドス、アクロポリス アテナ神域
★リンドス、アクロポリス 光る海
★エーゲ海の微笑み エーゲ海航空スチュワーデス
大久保正雄COPYRIGHT2001.12.26
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