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2016年6月24日 (金)

アクロポリスをめぐる戦い 賢者ソロン、弱者のために戦う

Ookubomasao98大久保正雄『地中海紀行』第30回
アクロポリスをめぐる戦い 賢者ソロン、弱者のために戦う

エーゲ海のように美しい、紺碧の瞳。
イオニアの少女は、エーゲ海の島で生まれた、
大理石の彫刻となり、永遠に微笑む。
永遠に刻まれた、死せる少女の美しい微笑み。

藝術に溢れた都、
夜空に燦めく星のごとく、優れた魂、
高貴な魂が、生まれた都、
輝く都市、アテナイ。
アクロポリスの丘に、独裁者と対峙、
自由のために戰ったアテナイ人。
戰う高貴な魂のみが、眞の叡知に到達する。

*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
*大久保正雄『永遠を旅する哲学者 美のイデアへの旅』

■ギリシアの時間
八重櫻、牡丹櫻が咲き亂れ、木蓮の花薫る日、花吹雪が舞い、夕暮になると、様々な花の香りが漂う。春の黄昏刻、紫の光が闇を覆い、樹木の香りが風に融け、心が風に溶けるとき、ギリシアの渇いた空気、輝ける海、時空から解き放たれた、ギリシアの優美な時間の燦めきを思い出す。
風に花びらが舞うように、友人から手紙が届いた。『アクロポリスの光と影』を読んだ友は、「ギリシアのたゆたうようなゆっくりとした時間を思い出し、叙情性が流れている時間を感じる」と書いた。枝を広げた樹陰で木の実を拾い、葡萄の樹木の葉陰でクレタ島のラキを飲む昼下がり、ギリシアの時間が流れる。木洩れ日の下で、生きる樂しみを愛でる古代人の輝く瞳を思い出す。終焉と始原が一致する、永遠に回帰するギリシアの時間。死が生に還帰する。円環的時間が時の岸辺に打ち寄せる。エーゲ海の潮のように、波のように。

■偉大な人間の時代 
ソロン、クレイステネス、テミストクレス
アテナイには、夜空に燦めく星のごとく、眞に偉大な人間、優れた人物が、現れた。貧しい人のために、尽力したソロン。ソロンは、貧しい人を救済するために、法を作り、詩を作った。不屈の精神を以って、独裁僭主と戦ったクレイステネス。智謀と機略に優れ、未來を予見し、ギリシアを危機から救ったテミストクレス。戰略に優れ、高貴な人柄を有したペリクレス。この世に美しきものを殘した藝術家フェイディアス。マラトンの戰いで戰い、美しい復讐劇を書いたアイスキュロス。眞実を探求する魂、内なる霊の聲を聞いたソクラテス。人類史に殘る、美しい対話編を書いたプラトン。貴族が高貴な義務を果たした時代。夜空に輝く星のごとく、優れた魂、美しい魂が、生まれた都、アテネ。
 地上には惡しき国が存在する。私利私欲を追求する者が支配階層を占める国。私利私欲のためにのみ行動する人物、名譽欲を追求する者が、社会の枢要を占める国。偉大な人間を一人も持たない国は悲惨を極める。私利私欲のために行動する者が支配する国は、必ず滅亡する。

■将軍(ストラテゴス)の義務
貴族が高貴な義務を果たした時代。ヨーロッパには、貴族の義務(noblesse oblige)の思想があった。貴族は、身分が高いがゆえに戰いの時には、己の命を賭けて戰う義務がある。
ギリシアにおいて、將軍(ストラテゴス)は、国家を守るために、軍を率いて兵士の命を死の危険に曝すため、戰爭に対して責任を負う義務がある。指揮官が率いた作戰に失敗があったときは、ストラテゴスはその結果に対して責任を負った。
紀元前487年の改革によってアテナイにおいてアルコン(執政官)の選出は抽籤となったが、將軍の選出は選挙によった。戰爭で軍を率いる將軍の責務は重いからである。
紀元前406年レスボス島の南、アルギヌーサイの海戰において、アテナイ海軍は敗れ、艦隊を編成し救援に向かった。スパルタ海軍を打ち破り、スパルタは難船したが、嵐のため、アテナイ艦隊の兵も海に溺れた。アテナイ軍はこのアテナイ人を救う事が出来なかったため、アテナイ市民は怒った。帰還した七人の將軍は一人を除き、弾劾され、人民会議で審議し、財産没収の上、死刑を要求した。6人の將軍は処刑された。そのなかにペリクレスの子ペリクレスがいた。この時、人民会議議長はソクラテスであった。通常の裁判の手続きによらず違法であり、ソクラテスはこの一括審議に断乎反対したが、民会の決議は、採決を要求、処刑は執行された。(cf.クセノポン『ソクラテスの思い出』)
また、紀元前489年、將軍ミルティアデスは、パロス島遠征に失敗し、巨額の罰金を科され、この年没する。
指揮官が指揮した責任をとらず、部下に責任を転嫁し、兵士を犠牲にして、自らは富と安寧を貪る国。惡が榮え、高慢な富者が支配する国は、必ず滅びる。

■ソロン 貧しい人のために力を尽くした賢者
ソロン(BC640-559)は、アテナイの立法者、アテナイ最古の詩人。ギリシア七賢人の一人である。ソロンは法律を詩で作ろうとした。
アッティカは、凶作に襲われた。アテナイは貧富の差が拡大、富者と貧者の不均衡は頂点に達した。負債のために所有地を失い奴隷に売られるものが多かった。多くの人々が少数の者に隷属していた。貧者は、6分の1の地代を納めるので6分の1(ヘクテモリオイ)と呼ばれた。富める者は貪欲かつ傲慢で不正を恣にした。富める者はますます富み、貧しい者はますます貧しく、貧富の差は、激しくなるばかりであった。富者と貧者の抗爭が激化した。民衆は貴族に対して、反抗し決起した。
ソロンは詩を作った。「惡人が富み榮え、善人で貧しい者が多い。」(プルタルコス『対比列伝』)ソロンは、富める者の貪欲と傲慢から抗争が生まれた、と考えた。ソロンは市民によって、富者と貧者の抗爭の調停者として選ばれた。
紀元前594-3年、ソロンは、アテナイのアルコンになる。危機克服のために、改革を行う。個人の債務帳消し(セイサクテイア=重荷下し)を行い、身体を抵当とする金貸しを禁じた。かくしてアテナイ市民が奴隷に零落するのを防いだ。
市民を財産評価(土地所有)により、5百メディムノス(ペンタコシオメディムノス)級、騎士(ヒッペウス)級、農民(ゼウギテス)、労働者(テテス)、の4階級に区分した。官職につきうるのは上位3階級とし、最下級のテテスには、民会(エクレシア)と法廷(ディカステーリア)に参与する権利を与えた。官職には、9人のアルコン、財務官、契約官、11人、コラクレタイがあった。アレイオスパゴス会議をそのまま、存続させたが、旧来の4部族制に基づく400人評議会を新設した。殺人に関する法を除いて、ドラコン法を廃止、新しい法を立てた。ソロンの法は、以後、アテナイ法の基礎をなす。ソロンの改革には富者も貧者も不満だったので、10年間、法を変更しないことを誓わせて、エジプト、キュプロス、イオニア地方を旅した。
帰国後、抗爭が激しく、紀元前561年、ペイシストラトスが僭主(テュランノス)となる。ソロンは、僭主政を弾劾しアゴラで演説したが耳を傾ける者はなく、終始反対して没した。
アリストテレスはソロンを、「ソロンは、他人を抑えて国家の独裁者になることも出来たが、独裁者にならず、双方の側から憎まれても、自己の利益よりも美徳と国家の安全を重んじたほどに節制であり、公平であった。」と、評価する。(cf.プルタルコス『対比列伝』「ソロン伝」、アリストテレス『アテナイ人の国制』)

■法律は蜘蛛の網である
ソロンは、スキタイ人の賢者アナカルシスがソロンの家に滞在した時、国政に携り、法律を編纂していた。アナカルシスは、ソロンの仕事を知ってそれを嘲笑った。「ソロンが市民たちの不正と貪欲を抑止しようと考えているのは蜘蛛の網のようなものである。蜘蛛の網のように架かった者のうち非力で弱い者は捉えておけるが、力ある者や富者によって破られる。ギリシア人の間では演説するのは賢人たちだが、決定するのが無知な人々なので驚いた。」(プルタルコス『対比列伝』「ソロン伝」)
ソロンは反論したが、賢者アナカルシスの言葉は不朽の眞実である。法は強者に仕える。法律を作り、施行するのは強者だからである。ソロンのように、貧者のために行動する賢者が支配者となるとは限らない。不正は、非合法になされるとは限らない。合法的に不正がなされる国がある。例えば、強者たる官僚による、官僚のための、官僚独裁の国。官僚が惡を行なう時、法律を作りながら例外を作り、これを裁くのは、官僚自身である。盗人に、給料を与え、裁判官に任じるようなものである。法律は人間の幸福のために作られた道具にすぎず、法律のために人間が仕えるのは愚かである。
★アクロポリスの丘 ムーセイオンの丘から
★アクロポリスの丘 プロピュライア
★ヴォロマンドラのクーロス(アテネ考古学博物館)
大久保正雄COPYRIGHT 2002.04.24

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