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2016年6月20日 (月)

エーゲ海の薔薇、ロドス島 皇帝ティベリウス、ロドスのアンドロニコス

Ookubomasao72Ookubomasao71Ookubomasao85大久保正雄『地中海紀行』第26回
エーゲ海の薔薇、ロドス島 皇帝ティベリウス、ロドスのアンドロニコス

空と海と光が溶けあう、海のほとり、
光と薔薇の島、ロドス。
糸杉にかこまれた時間の回廊。
エーゲ海の微風が吹く、咲き亂れる花の島。

32歳で夭折した、アレクサンドロスが遺言を殘した島。
プトレマイオス1世が、攻城王デメトリオスから守った島。
カエサルが弁論術を学ぶためにローマから航海した島。
皇帝ティベリウスが隠遁。ロドスのアンドロニコス『アリストテレス全集』編集。
さまよえるヨハネ騎士団とともに、漂い流れ着いた、
洗礼者ヨハネの右手。失われた肉體。

英霊は、エーゲ海を漂い、精神のみが生きる。
肉體は精神の死を生き、精神は肉體の死を生きる。

*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
*大久保正雄『永遠を旅する哲学者 美のイデアへの旅』

■エーゲ海の薔薇 ロドス島
咲き亂れる花にみちた島ロドス。エーゲ海の樂園。ロドス島は、イオニア地方沿岸に浮かぶドデカニソス諸島のなかで最大の島であり、南に位置する。ロドスからイオニアの海岸が見える。ロドスの名の語源は不明であるが、ヘレニズム時代にロドスが発行した硬貨の表には太陽神ヘリオスが、裏には薔薇が刻まれ、ロドス人自身によって薔薇の島と考えられていた。薔薇はロドスのトレードマークである。ロドス陶器に薔薇が刻印され地中海の港に輸出された。太陽神ヘリオスはロドスの守護神である。ロドス島は、黒海、ビュザンティオン、地中海を結ぶ海上交易路、また地中海戰略上の拠点である。ロドス海商法が、エジプト、エーゲ海の島々、地中海の港にあまねく支配し、ロドス人の船が地中海世界に融通無礙に航海した榮光の時代が追憶される。
紀元前5世紀、サモス島のアテナイ海軍がリンドスとカミロスを海上から攻撃、紀元前3世紀、アンティゴノス朝マケドニアがロドスを包囲、16世紀、オスマン帝國がロドスを包囲、攻撃した島。古代のポリスと中世の城砦が空間を織り成す島である。

■地中海都市とゴシック都市
地中海都市
ギリシアの海、エーゲ海。地中海都市の舞台装置は、アクロポリスと列柱とアゴラ、回廊と中庭である。そして陽光が降りそそぐテラスである。アクロポリスの丘から、海が見える。光が降りそそぎ、大理石の白い神殿が輝く時、人間の尊厳が輝く。個の魂の存在の尊さ、精神の美しさが光り輝く。列柱に眞昼の影が深くなる時、有限なる人間の榮光が刻まれる。アゴラに人が集まり、人が語り合い、テラスで光をあびながら、食べる、言い爭う、愛する、競技することを樂しむ。
地中海都市は、無限に向かって開かれた都市である。海は自由への扉である。世界に向かって開かれた窓。一つのポリスから他のポリスへ、独裁政から民主政へ、この世に絶對的な國家はない。この世に絶對的な法律はない。法律は人間のために作られた束の間の約束に過ぎない。エーゲ海を旅するギリシア人は、ポリスは相對的なものに過ぎないことを知っている。冬、大地を耕す者は、夏、海を航海する。海を航海する者は、權力に抗し、自ら支配者たり得る。ギリシア人は「いかなる者の奴隷でもなく臣下でもない」(アイスキュロス)。地中海都市は精神の樂園である。
ゴシック都市
ゴシック都市の舞台装置は、尖塔とゴシック・アーチとヴォールトからなる。天を目ざして高く聳える塔は神の絶對的権威の象徴であり、僧侶は祈り、騎士は戰い、農夫は耕す。王は獨裁者として僧侶と官僚を用いて君臨する。ゴシック都市は、閉ざされた都市。王は、階層社会の頂に君臨し法律に従わず、神の権威の下に民衆を土地に釘づけにする。神が天上界に君臨するごとく、王は地上に統治する。
獨裁者の下に赴く者は、自由人であっても奴隷となる。ゴシック都市は監獄都市である。脱出不能の牢獄である。囚われた人間は、生きながら死ぬのである。ゴシック都市において、僧侶は権威を身に纏い、騎士は権力に従属し、民衆は隷属する。僧侶は、権威を身に纏い、名譽欲が強く執念深く學識はあるが、愛はない。有限な知識の庭を歩き回る禽獣である。創造はない閉ざされた権威の王國。いかに多くの知識を身に纏い、地位が高く名譽を身に受けても、愛と創造がなければ生きる価値はない。ゴシック都市は奴隷制の王國であり、ゴシック都市の城壁は奴隷を閉じ込める檻である。
だがロドスの城塞都市は海に開かれた都市である。

■ロドス 古代と中世が重なる街
ロドスの都市は美観を誇る。首都ロドスは、島の北端にあり新市街と旧市街からなる。マンドラキ港の波止場には三基の風車があり、港の入口には雌雄の鹿の石柱が立っている。此処にはかつてロドス島の守護神、太陽神ヘリオスの巨像が建っていたが、紀元前228年、大地震がロドスを襲い崩壊した。ロドスは、かつて蛇が多かったが、これを退治するため鹿を飼った。今も鹿の図案が陶器に用いられる。
旧市街は、堅牢な城壁で囲まれ、城門がある。北側に騎士の館の群があり、南側に市民の居住区域がある。聖ヨハネ騎士団が築いた海側の城門を入ると、騎士の館が建ちならぶ狭隘な騎士の通りがある。アフロディーテ神殿遺跡が残る。石畳の坂道を昇ると、オーヴェルニュ語族の館、イタリア語族の館、聖マリア教会、イギリス語族の館、ロドス考古学博物館となっているヨハネ騎士団病院、七ヶ国語族の館、がある。そして坂の頂上に14世紀に建てられた騎士団長の館が、アポロン神殿跡にある。
騎士団病院は、15世紀にローマ遺跡の上に建てられ、今、ロドス考古学博物館として用いられている。二階建回廊が中庭をめぐり、二階から緑の中庭が見下ろせる。ここには「ロドスのヴィーナス」がある。
旧市街、ソクラテス通りの頂上にスレイマニエ・モスクがあり、縦横に袋小路が走る。城塞都市は、迷路のように小路が張りめぐらされている。旅人は、空間をさまよい歩きながら、時の迷路に迷い込むのである。時計塔の上から旧市街全域が眺められる。旧市街は、城壁が囲み、騎士の館の群と市民の居住区域すべてを守る城塞都市であることがわかる。城壁の彼方には、青く美しい海が見える。地中海クルーズ、エーゲ海クルーズの巨大な客船が何隻も停泊している。木の下にはパラソルが広げられ、カフェテラスがある。広場で、犬が昼寝をしている。
ロドス市街の南西、丘の上にロドス・アクロポリスがあり、アポロン・ピュティオス神殿遺跡(紀元前5世紀)がある。その下に競技場がある。

■皇帝ティベリウス
紀元前75年、ユリウス・カエサル、モロンの息子弁論術教師アポロドロスに学ぶためにロドスに航海する。アポロドロスはキケロを教えたことがある。ブルートゥスも弁論術を學ぶために來た。紀元前6年、ティベリウス(第2代皇帝)はロドスに隠棲し哲學を學ぶために來た。また將軍ポンペイウスもロドスに來た。紀元57年リンドスの入江に、パウロが來島し、キリスト教を伝えた。

■ペリパトス派、ロドスのアンドロニコス『アリストテレス全集』
紀元前1世紀、ロドスのアンドロニコスは、アテナイのリュケイオンにて、「アリストテレス全集」を編纂する。ペリパトス派最後の学頭。ペリパトス派は、ロドス人が多い。紀元前321年アリストテレスの死以後、ロドスのエウデモスは、ロドスのパシクレスが書いた『形而上學』第一巻講義録を編集した。
ローマ時代以後、ロドスは歴史の舞台から姿を消す。1千年の時が流れ、1308年から1523年まで二百年間ヨハネ騎士団がロドス島を本拠地とし城塞都市を築いた。ロドスは、古代の神殿の上に中世の城塞都市と市街の迷路が融け込む、時の迷路である。
★参考文献
Herrman Diels,Walter “Kranz Die Fragmente der Vorsokratiker” 3 Bande,Berlin, 1953
内山勝利編『ソクラテス以前哲学者断片集』全6巻、岩波書店1996-1998
プルタルコス河野與一訳『プルタルコス英雄伝』岩波文庫
プルタルコス『プルタルコス英雄伝』「デメトリオス伝」「カエサル伝」「キケロ伝」「ブルートゥス伝」「ポンペイウス伝」
W.W.ターン角田有智子・中井義明訳『ヘレニズム文明』思索社1987
橋口倫介『十字軍騎士団』講談社学術文庫1994 pp.125-126
周藤芳幸・村田奈々子『ギリシアを知る事典』東京堂出版2000
 11.ロドスとヘレニズム時代の東地中海 pp.204-223
塩野七生『ロードス島攻防記』新潮社1985
ロレンス・ダレル土井亨訳『海のヴィーナスの思い出 ロドス・太陽神の島1945-1947』新評論1999
トゥキュディデス 久保正彰訳『戰史』岩波文庫1966-67
大久保正雄COPYRIGHT 2002.2.27
★リンドス、アクロポリス 光る海
★リンドス、アクロポリス アテナ神域
★リンドス、アクロポリス 

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