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2016年6月 8日 (水)

幻影の帝国ビザンティン 地位崇拝の階級主義

Ookubomasao46Ookubomasao49Ookubomasao50大久保正雄『地中海紀行』第16回
幻影の帝国ビザンティン 地位崇拝の階級主義

星の瞬く夜。地中海に到る、
ボスポリオンの港に波が打ち寄せる。
三重の城壁に囲まれた丘の上。
哲學を愛した皇帝、ユリアヌスが生まれた地。
幻影の都、コンスタンティノポリス。

宮殿の奥深く聳える、皇帝の眞珠宮殿。
神の聖なる智慧に献げられた寺院。戰車競技場に決起、
對立皇帝を立て、コンスタンティノポリス市民は反亂する。
皇帝を生み出したものは、皇帝を死に至らしめる。
千年の歳月を生み出した官僚制は、帝國を蝕み滅亡させる。
眠れるごとき一千年の歳月。
帝國は滅び、いま幻影のみが蘇る。

*大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』より
*大久保正雄『永遠を旅する哲学者 美のイデアへの旅』

【幻影の帝國】
糸杉の丘の向こうに、海が見える。
この海は地中海に至る海である。海峡の彼方にペラ地区が見える。かつてジェノヴァの商館が立ち並んだ坂の町。金角湾(Golden Horn)の入り江に、林立する船影が見える。
アクロポリスの丘を歩くと、幻影の帝國、ビザンティンの面影が蘇る。緋色の帝衣を翻して、皇帝が歩く。幻の眞珠宮殿、戰車競技場、回廊と列柱、皇帝の墓所。すべては灰となり、この世から消えた。ギリシアとローマとキリスト教が融合した不思議の國。幻影の帝國、ビザンティン。
セヴェルス、コンスタンティヌス、テオドシウス2世、三人の皇帝によって、強固な城壁が築かれた。コンスタンティノポリスは、三重の城壁と海で囲まれた難攻不落の城塞である。眠れるごとき千年の歳月。帝國の都は地上から消え、大地が残った。
何故、ビザンティン帝國は、一千年の月日を生き残ることができたのか。

【ビザンティン 一千年の帝國】
ビザンティン帝國(395-1453)は、テオドシウス帝の子アルカディウス帝(395-408)に始まる。コンスタンティノポリスを首都とする。正式名称はローマ帝國、臣民はロメイオイ(ローマ人) と自ら呼ぶ。ローマ皇帝の後継者を任じる皇帝によって統治されたギリシア人のキリスト教國家である。ギリシア人を中心とする多民族國家。ローマ帝國の後継國家として、東ローマ帝國、中世ローマ帝國と呼ばれる。

■皇帝専制国家
ビザンティン帝國は、皇帝の下に富と権力を集中させた皇帝専制國家、官僚制と軍隊の帝國である。歴史の主要舞台は、開かれた空間、戰車競走場から、宮殿の奥の閉ざされた闇へと移る。宮殿の奥深く繰り広げられる儀式。「皇帝は神の代理人」、皇帝が教会を支配下に置き、聖俗両界を掌握する。高級官僚は「皇帝の奴隷」である。官僚と軍隊は税金を食い潰す魔物である。
皇帝を頂点とするビザンティン帝國の社会は、三つの階層に分かれ、頂点に立つ少数の上層階層と多数の底辺の下層階層からなる。上層階層(皇帝、貴族、高級官僚)、中層階層(商人、職人)、下層階層(農奴、奴隷、貧困層)である。自らの労働に基づかず、他人を搾取することによって成立する支配階層の繁榮が退廃を生む。

■官僚制の帝国
ビザンティン帝國は、官僚制の帝國である。皇帝を生み出した者は、皇帝を死に至らしめる。89代の皇帝の43人が反亂と陰謀で倒れた。例えば、7世紀、軍と元老院と市民は自らの監視の下にフォカス帝(602-10)を退位させた。だが、皇帝個人の人格、能力如何に関わりなく、絶え間なく行政に携わる官僚組織が存續する限り、帝國は存在し續ける。
 皇帝は神の代理人。高級官僚は皇帝の奴隷。官僚は、國家の富を食い潰す魔物である。面従腹背の官僚は不滅である。コネと賄賂を重んじる。皇帝役人によって統治される、官僚制の帝國、組織の帝國、ビザンティン。それは惡の帝國である。皇帝は死に、反亂する市民は虐殺され、元老院が破壊され、勇敢な武士が戰場に倒れ、國が滅びても、官僚制は生き殘る。ビザンティン帝國一千年の歴史を作り上げた要因は、官僚支配の体制である。

■ビザンツ人
中世ギリシア人、ビザンツ人の特質は、1、利己主義の亡者。2、権威・権力に阿る、卑屈な精神。批判精神の欠如。「皇帝の奴隷」である。3、瑣末なことに拘泥し、崇高な究極目的を無視する。
近代ヨーロッパ語においてByzantineという言葉は、「阿諛追従する、曲學阿世の徒」「複雑で分りにくい」「瑣末なことを重んじる」「地位崇拝の権威主義」を意味する。ビザンティン帝國の官僚機構から生まれた言葉である。
ビザンティン帝國の官僚は、指導的階層であるが、自ら皇帝の奴隷と卑下する。だが皇帝を裏切ることはやぶさかでなく、つねに新たな権力者に媚び諂う。自己の地位を守るためである。腐敗し、創造性を失った「組織の帝國」の構造は、20世紀日本と酷似している。
★参考文献
井上浩一『生き残った帝国ビザンティン』講談社現代新書1990
井上浩一『ビザンツ帝国』岩波書店1982
井上浩一『ビザンツ皇妃列伝』筑摩書房1996
井上浩一・栗生沢猛夫『ビザンツとスラブ 世界の歴史11』中央公論社1998
渡辺金一『コンスタンティノープル千年 革命劇場』岩波新書1985
渡辺金一『中世ローマ帝国 世界史を見直す』岩波新書1980
和田廣『ビザンツ帝国 東ローマ1千年の歴史』教育社1981
ベック渡辺金一編訳『ビザンツ世界の思考構造』岩波書店
スティーブン・ランシマン護雅夫訳『コンスタンティノープル陥落す』みすず書房1969
ゲオルク・オストロゴルスキー和田廣訳『ビザンツ帝国史』恒文社2001
伊東孝之、直野敦、萩原直、南塚信吾、柴宜弘編『東欧を知る事典』平凡社2001
クリス・スカー著 青柳正規監修『ローマ皇帝歴代誌』創元社
益田朋幸・赤松章『ビザンティン美術への旅』平凡社1995
★ブルー・モスク
★ジャンニ・ヴェルサーチのデザイン によるホテル Inter-continental Istanbul
★ジャンニ・ヴェルサーチのデザイン によるホテル Inter-continental Istanbul
大久保正雄COPYRIGHT 2001.8.29

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