「北斎 冨嶽三十六景 井内コレクションより」国立西洋美術館・・・神奈川沖浪裏、凱風快晴、赤富士、青富士、山下白雨
大久保正雄『旅する哲学者 美への旅』第425回
葛飾北斎(1760-1849)は、最初期、勝川派の絵師として活動した春朗期(20~35歳頃)、勝川派を離れて浮世絵画派とは一線を画した作画活動を行った宗理期(36~44歳頃)、読本の挿絵に傾注した葛飾北斎期(46~50歳頃)、多彩な絵手本を手掛けた戴斗期(51~60歳頃)、錦絵の揃物を多く制作した為一期(61~74歳頃)、自由な発想と表現による肉筆画に専念した画狂老人卍期(75~90歳)、鳳凰図屛風、富士越龍図へと飛翔する。
【葛飾北斎、苦節五十年】北斎(1760年~1849年)は、20歳で絵師となるが売れず、苦節50年、72歳『富岳三十六景』『神奈川沖浪裏』(1831)まで苦境。北斎は、九十歳で死ぬまで絵を描きつづける。
【不屈の画狂老人卍】74歳にして画狂老人卍『鳳凰図屏風』(1835)、88歳『弘法大師修法図』、89歳『八方睨み鳳凰図』(1848)、90歳『富士越龍図』(1849)。90歳にして「天我をして五年の命を保たしめば、真正の画工となるを得べし」「画工北斎は畸人なり。年九十にして居を移すこと九十三所。」飯島虚心『葛飾北斎伝』。
★葛飾北斎『冨嶽三十六景』天保1–4年頃(1830–33年頃)北斎為一
【葛飾北斎、苦難の旅立ち】北斎最初期、19歳で勝川春章に弟子入り、20歳で勝川春朗として絵師となる。勝川派の絵師として活動した春朗期(20~35歳頃)。弟弟子に追い出される。勝川派を離れて浮世絵画派と一線を画した作画活動、俵屋宗理となる(36~44歳頃)。
【葛飾北斎、苦難の人生】北斎、画狂老人卍期(75~90歳)。72歳で絵は売れても、実生活は貧困。孫が不良で神奈川浦賀に逃れる。店屋物をとり絵画制作に没頭。引越し93回、画号を30回変える。80歳の時、火事に遭う、大八車一台の絵画資料を失う。90歳まで絵画藝術を追求する。
――
己六才より物の形状を写の癖ありて
半百の此より数々画図を顕すといへども
七十年前描く所は実に取るに足ものなし
七十三才にして稍禽獣虫魚の骨格草木の出生を悟し得たり
故に八十六才にしては益ゝ進み九十才にて猶其奥意を極め
一百歳にして正に神妙ならん歟
百有十歳にしては一点一格にして生るがごとくならん
願くは長寿の君子予が言の妄ならざるを見たまふべし
画狂老人卍述
— 『富嶽百景』初編跋文⋆天保5年(1834年)初編
――
*大久保 正雄『旅する哲学者 美への旅』より
大久保正雄『永遠を旅する哲学者 イデアへの旅』
――
「北斎 冨嶽三十六景 井内コレクションより」国立西洋美術館
https:/
本展は、2024年に井内コレクションより国立西洋美術館に寄託された、北斎の『冨嶽三十六景』(1830~33年頃)を初披露する展覧会です。北斎の代表作である本シリーズ全46図を一挙に公開します。さらに、特に高い人気を誇る「神奈川沖浪裏」と「凱風快晴」については、それぞれ異なる摺りがもう1点ずつ併せて紹介されます。「神奈川沖浪裏」は、現存する中でも類を見ないほど摺り・保存状態に優れた一枚が加わります。
また、“赤富士”として知られる「凱風快晴」は、極めて希少な藍摺版、通称“青富士”も特別に展示します。これら全48点を、モネをはじめとする西洋美術コレクションを誇る国立西洋美術館で堪能できるまたとない機会となります。
「凱風快晴」
「凱風快晴」(通称“青富士”)
本展の見どころ
井内コレクションの『冨嶽三十六景』の特徴は、全般に摺られた時期が早いことにあると言えます。浮世絵版画は摺りが数多く重ねられると、版木が摩滅したり、欠損したりしてしまうことがあります。本コレクションには、細い線がシャープであるものが多く含まれていますが、これは版木が摩滅していないフレッシュな状態で摺られたことを示しています。
また、浮世絵版画は、補強のためにしばしば背面に裏打ち紙を貼ることがありますが、本コレクションの多くは裏打ちが施されていません。そのため、背面からも絵具の色の鮮やかさが確認でき、摺師が力を込めたバレンの跡も残されています。本展では、いくつかの作品で表裏両面から見ることのできる展示方法が採用される予定です。
――
★★★★★
主な展示作品の一部
「神奈川沖浪裏」
「凱風快晴」
「山下白雨」
「常州牛堀」
「五百らかん寺さゞゐどう」
「江都駿河町三井見世略図」
「東海道程ヶ谷」
「甲州三坂水面」
※掲載作品はすべて葛飾北斎『冨嶽三十六景』より、1830-33(天保1-4)年頃、横大判錦絵、国立西洋美術館(井内コレクションより寄託)
――
★★★★★
参考文献
「北斎 冨嶽三十六景 井内コレクションより」国立西洋美術館・・・神奈川沖浪裏、凱風快晴、赤富士、青富士、山下白雨
http://
「新・北斎展」・・・悪霊調伏する空海、『弘法大師修法図』
https:/
「筆魂 線の引力・色の魔力─又兵衛から北斎・国芳まで─」・・・画狂老人卍『鳳凰図屏風』の思い出
https:/
【葛飾北斎、美人画、勝川春朗、宗理型美人、亀毛型美人】「江戸の名プロデューサー 蔦屋重三郎と浮世絵のキセキ」・・・浮世絵師の偉大と退廃
http://
北斎とジャポニスム、国立西洋美術館・・・『富嶽三十六景』『北斎漫画』
http://
――
国立西洋美術館企画展「北斎 冨嶽三十六景 井内コレクションより」
メディア内覧会、監修者の十文字学園女子大学の樋口一貴教授が見どころを報道陣に詳しく解説した。
樋口一貴教授の解説
1. 葛飾北斎と「冨嶽三十六景」について
葛飾北斎は1760年に生まれ1849年に没するまで、90歳の長寿を全う。そのうち約70年間、没年まで画業を続けた浮世絵師。
長いキャリアの中で何度も画号を変え、版画・版本・肉筆画に取り組み、役者絵、美人画、風景画、花鳥画など様々な画題を描いた。「冨嶽三十六景」は、北斎が「為一いいつ」と名乗っていた70代前半頃の作品。
タイトルは「三十六景」、余りの人気に10図が追加され、全46図で完結。井内コレクションは、この全46図すべてを網羅している。
2. 井内コレクションの見どころ1:摺りの違いを比較できる
本展では、同じ図柄でも「摺りの違い」を楽しめるよう、贅沢な展示が行われている。手摺りの浮世絵は、摺り師の具合、絵の具の濃淡や摺った時期によって、同じ版木でも微妙に表情が異なります。
「神奈川沖浪裏」
「神奈川沖浪裏」:このシリーズで最も有名で「グレート・ウェーブ」の名で世界的に知られている「神奈川沖浪裏」を2枚展示(4月21日から追加で3枚目を展示)。
「凱風快晴」
「凱風快晴」:”赤富士”で知られる「凱風快晴」も2枚を展示。2枚目は山肌の赤い版を使わず青く仕上げた、世界的にも希少な”青富士”です。同じ輪郭線でありながら全く違った作品になっている。
3. 井内コレクションの見どころ2:驚異的な保存状態の良さ
井内コレクションは全体的に摺られた時期が早く、版木の摩滅が少ないため、北斎が意図したシャープな線が残っている。さらに、大変に薄い紙を使う浮世絵は補強のために裏に紙を貼る「裏打ち」をされていることが多いが、井内コレクションには裏打ちを1回もしていない、当時のままの薄い状態で残っている作品がいくつかある。
両面展示の試み: この裏打ちの無い紙の薄さを実感してもらえるよう、中央に3つの独立ケースで「神奈川沖浪裏」「甲州石班澤」「東海道品川御殿山ノ不二」の3点を両面展示している。
裏から見ることで、ベロ藍の浸透具合や、摺り師がバレンで強くこすった痕まで観察できます。これは江戸時代の人々が裏返したり、日に透かしたりして楽しんだ感覚を追体験する試み。
中央に3つの独立ケースが並び裏側からも見ることができる
4. 展示構成:署名の書体から紐解く出版順の6グループ
展示は A~Fの6つのコーナーで構成されています。これは北斎が版元へ下絵を渡した順番(出版順)を推定して分けたものです。
この時期の作品はベロ藍が多く使われたことがわる(Bコーナー)
「北斎改為一筆」といった署名の書体の変化に基づいてグループを分類している。なお、一番わかりやすいのは追加で作られた10図(Fコーナー)で、署名がベロ藍でなく「墨」で摺られているため、一目で判別可能。それ以外の36図は「ベロ藍」で摺られている。
5. 3枚目の極めて早い摺りの「神奈川沖浪裏」
開幕直前に井内コレクションに加わった、3枚目の「神奈川沖浪裏」が4月21日から追加展示される。この作品は、画題を囲む二重枠に欠損がなく、線が非常に鋭く、極めて早い摺り。
また多くの「神奈川沖浪裏」の摺りでは、船の荷物を覆う「菰こも(むしろ)」が墨が濃く輪郭線が塗りつぶされて見えなくなっているが、この追加の作品は薄い墨で摺られており、下の輪郭線がくっきりと見える。この仕様のものは非常に数が少なく、貴重な「神奈川沖浪裏」となる。
追加展示される場所はすでに用意されている。
※作品はすべて葛飾北斎『冨嶽三十六景』天保1–4年頃(1830–33年頃)井内コレクション(国立西洋美術館に寄託)
――
★★★★★
北斎 冨嶽三十六景 井内コレクションより
会場:国立西洋美術館 企画展示室B3F(東京都台東区上野公園7番7号)
会期:2026年3月28日(土)~6月14日(日)※巡回予定無し
https:/






































最近のコメント